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災難その7.5



「じゃあ、よろしくね」


セシルとクラウドが去っていってしまった。
もう少しふたりで飲むという。

「フリオさんも御一緒すれば良かったのに〜」

と11が笑っている。

「俺の世界では、まだ未成年なんだ。さっきも言っただろ」

ひとつため息をつく。


どうやら彼女の世界では11はもう成人扱いらしく、飲酒可能な年齢だという。
相変わらず予想外な事実だが、そう自称しているのなら納得せざるを得ないだろう。
証明するものなどここにはないのだから。

それに甘んじて、先のふたりと宴会を繰り広げていた。
自分と同じく飲酒不可なティーダは、飲まずにも一緒に盛り上がっていたが、今はもう就寝している。
そんな中ひとり暇を持て余していたら、ほろ酔いな11の介抱を頼まれてしまった。

それはいい。
それはいいが、この状況をどうにかしなければならない。


「11、どいてくれないか」
「ダメですよ〜」

酒のせいで、いつも以上にテンションがあがっているようだ。
ひとり盛り上がるのは勝手だが、こちらを巻き込まないで欲しい。

11の肩に手を置き、膝から降ろそうと試みるも一向に腰を上げない。
それどころか腕を捕られ、前に回されてしまう。

「おっ、おいっ」

腕にしがみ付いて満悦そうに鼻歌なんか歌っている11。

惚れた女を抱き込んでいるのは役得とはいえ、相手は酔っ払いだ。
冷静に対応しておかなければならない。

落ち着こう。

落ち着け俺。


「な、なぁ11。そろそろ寝た方がいいんじゃないか?」

明日に響くと悪いだろと声をかけるも、まだ寝ませんよ〜と呑気な返事をする始末。
目前で御機嫌に11の頭が揺れている。
彼女の甘い香に、飲酒した者の独特のアルコール臭が混ざり、鼻を掠めた。


抱え込んでいる体の温もり。
時折腕に当る柔らかな感触。
足に掛かる適度な重みに、鼓動が高まる。


「セシルさんなんか、あんなに色白なのにさっぱり赤くならないんですよ〜、て聞いてますフリオさ〜ん」
「…聞いている」

11の呼びかけに思考を取り戻す。

酔っているとはいえ、いや、酔っているからこそ11のペースに飲まれてはだめだ。
ここはしっかり大人然として就寝させなければと頭を捻っていたら、ふと思い出した。
前にマッサージをしたとき、”腰を触るな”と嫌がっていた。
じゃあ触れば退けるんじゃないだろうか。

片腕を解き、そっと指で腰に触れてみる。
一瞬体が揺れたが退く気配は無い。
まだ刺激が足りないのか。
今度は手で撫上げてみる。

「あっ…」
「…」

退く所か、なんとも艶かしい声を上げてきた。
耳についた声色に、思わず喉がなる。


悪戯心に何度か手を這わせれば、身を捩りながらも退きはしない。
腕の中でもがき、声を押し殺している11の様相にこちらも頭が沸いてきた。

疼く下半身に、溜まらずきつく抱きしめる。
11の肩に顔を埋め、首筋に唇を這わす。
その感触がくすぐったいのか逃げるでもなく、ぎゅっと腕にしがみ付いてくる11。

頭では判っている。
こんな事はしてはいけないことだと。
それでも、体が止まらない。


「お〜い、フリオ〜」

背後から掛かった声に、ハっと我に返る。
腿へと伸びかけていた手を慌てて戻し、姿勢を正す。
振り向けばティーダが目を擦りながらこちらに向ってきていた。

「皆まだ飲んで…って、11?」

腕に収まる11に目を向ける。
11はニコニコと笑顔でティーダに顔を向けている。

「ダメっスよ〜、またフリオニールに甘えて〜」

困ってるだろ、とティーダ。
幸いにも、今ほどの行為には気付いていないようだ。
ホラホラ寝るぞ〜と11を引っ張って立ち上がらせている。

多少よろけてはいるが立ち上がり、相変わらずニコニコとした笑顔でティーダと言葉を交している11。


「それではもう寝ますからね〜、フリオさん〜」

話しが終わったのか、ティーダに引き摺られて行く11に手を振り返して見送る。


それにしても、タイミング良くティーダが起きてくれて良かった。
そうでなかったら、あのまま取り返しのつかないことになっていただろう。

(…どうかしている)

空いた両腕で膝を抱え、顔を伏せる。

どうか今の出来事を明日、11が覚えてないようにと願いながら、また一つため息を吐く。

-end-

2009/7/29 ちひ様リク




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