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物語



「ごめんな〜」

戦闘に疲れた様子もなく、ティーダが軽やかに駆けて来た。
それを受け、瓦礫の影に隠れていた11も出てくる。

「タイミング悪かったっスね。やっぱ安全な場所で呼べば良かったな〜」

申し訳なさそうな顔で頭を掻いている。

「いえ。敵には私の姿見えてませんし、どこでも一緒ですけど」
「えっ、そうなの?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」

11は首を傾げる。
コスモスさまの御加護のお陰なんですよ、と誇らしげな顔を覗かせる。
じゃあなんでわざわざ隠れるのか。
今回のようにタイミング悪く敵と遭遇してしまった時のこと。
自分は戦えないから邪魔にならないように、と少し離れた所で眺めていようとしたら、”気が散るから見えない所にいろ”とスコールに注意され、それもそうかもとそれ以来隠れるようにしているという。

「スコールなりの優しさっスよ、きっと。女の子に血腥いトコなんて見せたくないとかさ〜」

アイツ、口下手っぽいもんな〜と苦笑する。


「相手してやろうと来てみれば、なんだ」

突如、からかったような口調と共にジェクトが姿を現した。

「オヤジ!?」
「人の気配も感じ取れないほど、話に夢中か?」

ニヤニヤとこちらを伺うように、顎を撫でている。
しかし何か違和感がある。

「こっちの世界でも女侍らせて、誰に似たんだかねぇ」

やっぱりだ。こいつには11の姿が見えているらしい。

「なんで、見えてるんだ?」
「は?いきなり何言ってんだお前」

頭おかしくなったか〜と、呆れたような顔を向けてくる。
カオス側には彼女の姿を見ることができないなんてことは知らないのだから、当然の反応だろう。
それだって、ティーダもついさっき聞いたばかりなのだが。
11に視線をやれば彼女も訳がわからないといった戸惑いの表情をしている。
情報相違に、頭がグルグルしてくる。

「それにしてもよ、ティーダ。どうせ侍らせるならもうちっと凹凸のある方がいいんじゃねえか?」

こんな貧相なんじゃモノ足りねえだろ、とそう言いながらさりげなく11の肩を抱くジェクト。
いきなりの接触に驚き固まる11。

「セクハラすんなよっ」

そんなジェクトの態度に殴りかかるが、軽くかわされてしまった。

コイツはいつもそうだ。
寸でのところで交されて、追いつくかと思えば逃げられて。
それでもコイツを…、オヤジを乗り越えていかなきゃ前に進めないと思うと悔しくて。
悔し紛れに睨みつけてみたら、真剣な眼差しに射抜かれた。
その眼を反らすことができなくて、そのまま硬直してしまう。
ふざけていたかと思えばこうして真剣な態度を向けてきたり…。
そんな態度も、到底敵わない気がして余計に悔しさが増す。

「さっさと終わらせて、こんな世界から出ちまいたい所だが」

そう漏らし、背を向け歩き出すジェクト。

「あっ、おい!逃げるのかよ!」
「そんな面してるヤツとやりあっても、面白くねぇだろ?」

と闇に紛れ込むように消えて行ってしまった。
とりあえず彼女に危害が及ぶことはなくなり、ほっと一息つく。

「行っちゃいましたね、お父さん」

そうティーダを見上げれば、こちらに困ったような顔を向けてきた。

「あ〜。なんていうか、アイツ…、人が出来ないようなことを強引にやってのけるって言うか……」

一応身内だし、11ゴメン!、とうなだれている。
先ほどの、肩を抱いてきたことだろうか。
それなら驚きはしたが謝られる程のことではないと伝える。
それを聞いて安心したのか「良かった〜!」と思わず11に抱きついてくるティーダ。

(あれ?)

ふわりと11の鼻先を掠める香。
先程のジェクトとの接触時にも似たような香が鼻を掠めた気がする。


「こんにちは、ジェクトさん」

先日の接触時に気になったこともあり、11は無謀にも敵であるジェクトの元を訪れてみた。
突然の出現に驚いてるのか、呆れてるのか。
苦笑まじりに頭を掻いている。
何気ない仕草がティーダと似ているな、と思わず口元が綻ぶ。

「どうした嬢ちゃん」

危ないぞ〜と、至って呑気である。
よくよく見てみれば仕草だけでなく、風貌もティーダを思わせる。
親子とは無意識のうちに似てくるものなんだなと感心してしまう。

「で、何か用か?わざわざ敵陣の中に突っ込んでくるなんて」

どうやら話を聞いてくれるらしく、その場に腰をおろして隣に座るように促してきた。
そんなジェクトの様子にこちらも警戒することなく歩み寄って座り込む。

「私の姿って、カオスの方々には見えないようになってるんです」

でも、なぜか貴方には見えたようなので気になって来てみました、と率直に話す。
それから触れた時に掠めた香のこと、もしかして光の加護が貴方にもあるのかもと。

「光の加護、ねぇ……」

遠くを見つめ、顎にある無精髭をなぞる。

「光とか闇なんてもんは、誰でももってるんじゃねぇのか?」

難しいことはよく分からんがオレはただ、アイツと一緒に元の世界に戻りたいだけだ。 泣き虫だからな。ちょっとからかって本気ださせてやらないと、決心つかないだろ、アイツは。
と11の肩をポンポンと叩くジェクト。

「アイツはまだ若い。これから先、まだまだ無限の可能性が待ってるからな」

こんな所で油食ってる場合じゃないだろ、と笑う。
なるほど、彼に関しては光も闇も関係ないらしい。
それ故に自分の姿を見ることができるのだろうか。
それとも親子の情が成せる業なのだろうか。

「あぁ、でもそうなると嬢ちゃんともお別れになっちまうんだなぁ」

と意外にも申し訳なさそうな顔を覗かせた。
自分は、コスモスに仕える身だ。
秩序が戻れば仲間達と別れなくてはならない。
最初からわかっている。
だから、いつの日かその時が訪れても笑顔で送り出そうと決心はついているのだ。

「でも、皆さんとの思い出は私の中に残りますから」

寂しくなるが、彼らの物語に戻るには必要なことなのだから。

-end-

2009/3/?




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