感触
青々とした草が地面に生茂っている。
そこかしこに、これもまた緑溢れる木々が立ち並ぶ。
傍らには、風に揺らめく澄んだ水面。
辺りに敵の気配はしない。
優しい光に照らされた、コスモスの加護を受けた空間だ。
「休憩だー!」
聖地に足を踏み入れるなり、ティーダが水辺へと駆けて行く。
水辺に辿りつくや、上半身の衣服を投げ出し水浴びを始めた。
休憩を心底満喫する気満々である。
「まったく、元気なヤツだな」
ティーダの様子にそう苦笑を零しながらも自身の着けている装備品を外し、己自身も早速休憩体制に入るフリオニール。
クラウドとセシルも各々寛ぎの時間に入ったようだ。
依頼されていた生成を終え、ふと何かに気が付いたように隣にしゃがみ込んでフリオニールの下ろした武器を眺め始めた11。
「……フリオニールさん。こんなに身に付けてて重くないですか?」
と訊ねてきた。
仲間達はそれぞれ自分の得意とする武器のみ持ち歩いている。
重いといえばクラウドなんかはひとつだけでも充分重そうだが、おそらくフリオニールの武器の多さに対しての疑問なのだろう。
確かに手持ち数が多い分、重いかもしれない。
「重いと言われればそうだが…、これは俺流の備えだからな。 そんなに気にならないんだ。
備えあれば憂いナシって言うだろ?」
熟練度も上がるしな!と11にはよく分からない言葉を続ける。
「じゅくれん…度?身体を鍛えるということでしょうか。確かにフリオニールさんの腕、屈強そうですものね」
と、不意にフリオニールの腕を触ってみる。
鍛えられているだけあって、しっかり引き締まっていて筋肉質だ。
「お、おい11っ」
突然触れられたことに、思わず慌てるフリオニール。
「何してるっスか〜?」
そこへ水浴びから上がってきたティーダがやってきた。
サワサワとフリオニールの腕を撫で回している11に、ほんのり顔が赤いフリオニールといった不思議な光景を目に認める。
「腕、屈強そうだなと思って」
触らせてもらってるんです、と11。
あぁ、そういうことか、と納得するティーダ。
それにしても腕を触られているだけなのに、フリオニールは何をそんなにうろたえているのか。
女の子の扱いが苦手であろうことは薄々感じてはいたが、ここまであからさまだとちょっと可哀相な気がして助け船を出してやることにした。
「それなら、俺も負けてないっスよ!ブリッツで鍛えてるし!」
ホラホラと腕を差し出せば、興味津々といった様子でティーダの腕に手を伸ばしてきた。
触らせてもらえばフリオニールに引けをとらず、がっしりだ。
男の人の肉体とは、得てして硬いものなのだなとひとり感心する11。
そういえば、と何かを思い出したのか掴んでいた手を離す。
「ウォーリアさんも素敵な筋肉をお持ちなんですよ。
腕だけじゃないんですけどね、全体的に引き締まってらっしゃって……」
普段は鎧で判り難いんですけど、と笑顔で語りだした。
「11、ウォーリアのこと詳しいっスね〜」
11の語りに思わず感心を示したティーダの一言に、一瞬の沈黙が流れる。
その直後、11の頬が瞬時に赤くなった。
それを受け、何かを察したのか「……ゴクリ」とフリオニール。
「だっ…、誰かお呼びのようなので失礼しますね!」
慌てた様子でそう言い、赤くなった顔を両手で覆いながら11は消えてしまった。
あっという間に姿を眩ました11に首を傾げるティーダ。
「あれ? …俺、なんか変なこと言った?」
と疑問を浮かべながら顔を向けてくるティーダに、なんと返事をすればいいものかと困惑してしまうフリオニールだった。
-end-
2009/3/?
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