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機会



「しかし…」
「大丈夫だって。レベルも結構上がってるし」

スコール心配性だねー、って11が笑っている。
今日はスコールと11の3人でコロシアムに行く予定だったんだけど、少しばかりその予定を調整させてもらった。
ウォーリアを嗾けて、スコールと手合わせするよう。
スコールも、ウォーリアからの依頼は断りきれなかったみたいで11にその報告をしていたようだけど、その内容たるやふたりでは心許無いとか、誰かもうひとり連れて行けとか、終いには自分とふたりきりなんて危険だとか言い出す始末だ。
一体人を何だと思っているのか甚だ疑問だけど、スコールの懸念していることは少なからず当たっていると言うか。

率直に言うに言えないスコールと、ただ素直に身を案じてくれているものだと思っている11。
ふたりの ”心配” の行方が一致していないのが面白い。

それにしてもスコールも諦めが悪い。
11は自分のモノだ!と宣言してから随分と経つのに未だふたりきりになるのを邪魔してくる。
そんなに気に食わないのなら、こっちが告白する前にしてしまえば良かったのに。
まぁ、したところでその願いが適うことはなかっただろうけど。

11がスコールとそんな雰囲気にならないように手を回してきたのは自分だし、スコールが11に告白できるような隙は尽く潰してきたんだから。
だから今更それが覆ることはない。
あんなに必死になって、まだまだ子供だなぁなんて大人な余裕をかましてみたり。


「11〜、仕度出来たか?」

ふたりの話しに割って入り込む。
そうすると、スコールの顔が僅かに不機嫌そうに歪んだのが見て取れた。
そんなあからさまに嫌そうな顔向けてこなくてもなんて思ってみたりもするけれど、それが面白いからわざとやってるなんてふたりとも気付いていないんだろうな。
どうせだから、11の肩に腕を乗っけてしな垂れかかってみる。

11にしてみればいつものことだから、それを当然の如く受け止めて 「重い」 と一言苦言を漏らしてきた。
スコールは益々不機嫌そうな顔になっていく。
さすがにスコールの不機嫌さに気が付いたのか11が離れるよう促してきたけれど、そんなものは聞く気はない。

「バッツ。スコール、こういうの見るの嫌いだから離れてよ」
「えっ?そうなのか?」

ワザとらしく聞き返してみたりして。

「…11、仕度があるんじゃないのか」

きっとコイツは待ちくたびれている、とのスコールの言葉を受けて11は仕度に向っていってしまった。

こっちから離れる気がないのを悟って、11の方から離れられるように促したわけだ。
まぁまぁスコールも考えているようだけど、そんなものは一時的なものでしかないのに。
一時的にでも、ベタベタしている姿が視界に映らないだけで満足なのだろうか。

自分だったらどうだろう。
仮にスコールと11が恋人なんて関係だったとしたら。
そして自分がそこに横恋慕している立場だったとしたら。

…。

あぁ、邪魔するよな。
こんな可愛らしいモノじゃなく、堂々と。
くっつくふたりの間を裂いてでも邪魔しそうだ。
それで隙あらば奪い去る。
一時的なものなんかじゃ満足できるわけない。


「なんだ」

そんなことを頭に思い描いていたら自然ににやけていたみたいでスコールが怪訝そうな顔を向けてきた。

「…いや。スコール、かわいいヤツだなって」
「は…?」
「いやいやホント、カワイイよカワイイ」

そんな言葉を繰り返しているうちに、思いっきり顔を背けられてしまった。
当たり前か。
カワイイなんて連呼されて喜ぶ男もそうそういないだろうし。
自分的には嬉しいけれど。

「あまり、人前でくっつくのは止めてくれないか」

綻んだ顔を立て直していると、不意にスコールから声が掛かった。
スコールの言わんとしていることは判るけども、あえて聞き返してみる。

「なんで?」
「それは…」

そう言ったきり、言葉を噤んでしまった。

こういう肝心なことは口に出してスッキリしてしまった方が精神的にも楽だと思うんだけど、そういかないのがスコールらしいと言えばらしい。
幾ら自分がさりげなく色んな切欠を妨害してきたとはいえ、こんなでは元々想いが実ることは難しかったんじゃないだろうかなんて今更ながら心配してみたり。

「知ってるよ。スコールの気持ちぐらい」

スコールの態度見てりゃ嫌でも判る、と付け加えたら一瞬驚いた表情を見せたけど、すぐにクセなのか眉間に皺を寄せてこっちに目を向けてきた。

「でも、それで ”はい、どーぞ” なんて譲れるわけじゃないしさ」
「そんなことは、判っている」
「んじゃあ、見てるだけで満足なのか?」
「バッツ、一体なにを…」

人形じゃないんだから、見ているだけで満足なんてのは本当に相手のことを想っているとは言い難いと思う。
人間なら、喋ったり、触れたり、自分のものにしたいって思うのが普通だ。

「俺は自分の欲しいものはどうやっても手に入れたいと思うし、いつだって触れていたい」

スコールだって、そうだろ?と尋ねれば、ほんの僅かに視線が揺れた。
それを肯定の意と捉えておく。
男なら、惚れた女を独占したいなんて欲望は有って然るべきものなのだから。
ただこうして言葉に出せる自分と、素直に言葉に出せないスコールの差はあるけれど。

「だからスコールが11のこと好きでいたって構わないよ」

可能性は限りなく低いけれど万が一スコールに11を捕られてしまっても、また取り返しに帆走すればいいだけだし、とスコールの肩に片手を置く。
自分にしては珍しく真面目に話してみたのが功を成したのか、スコールも少し考えるように顔を俯けている。
そんな内に11が仕度を終えて戻ってきた。


「バッツ、お待たせー」

手荷物片手に引き連れてきたのはジタン。

「おーし、行こーぜー」

手をヒラヒラなびかせながらやってきた。
11に目を向ける。

「スコールが心配そうだったからさ。ジタン、今日空いてるっていうし」

3人なら安心でしょ、とスコールに笑顔を向けてきた。

スコールの肩に置いた手に掛かる振動。
俯いているから表情は窺えないけど、これは絶対に笑いを堪えてる。
こうして11とふたりきりになる機会を作ってみても、無意識のうちにそれを尽く回避されること早数回。
その度にスコールに目撃されている気がする。

「笑ってられるのも今のうちだって」
「せいぜいジタンを巧く撒くことだな」

そう、こちらに顔を向けることなくスコールはウォーリアの元へ向っていってしまった。

ジタンと11が、自分達の遣り取りに不思議そうな顔を覗かせてきたけど、さっきの話は秘密にしておこうと思う。
変に11を意識させる必要はない。
好きでいたって構わないとは言ったけど、わざわざ可能性を増やしてやるほどお調子者じゃないんだから。

-end-

2010/2/1




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