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お休み



地面に倒れたイミテーションに目を留める。
どうやら動く気配はないようだ。
敵の身体から粒子のようなものが散らばっていく様子を眺め、ティナはホッと一息をついた。

数々の戦いを経て自身の魔力もだいぶ制御できるようになった気がする。
しかし、心の片隅にはまた仲間を傷つけてしまうのではないかという不安も残る。
だからといって、この混沌とした異界の中において、力を使わずにただ見ているだけというわけにはいかない。
己の力でも守れるものがあるというのなら、勇気をだしてそれに立ち向かうことができるよう在りたいとティナは思う。

それでも、この連戦で少し疲れが溜まってきているようだ。
行動を共にしているオニオンナイトが今晩休めそうな場所を見つけてくると離れたまま、まだ戻って来ていない。
今晩といってもこの異界の中ではそんな概念もないのだが、身体を休める時間は必要である。
こうして、疲労が溜まっているのなら尚更だ。
遠くには行ってないだろうし、時期に戻ってくるだろう。

オニオンが戻ってくるのを待つ間に、戦闘で乱れた髪を直そうと結い紐を解く。
あちらこちらに飛び回って、絡み合った髪を手櫛で解しながら整えていると誰かの気配が近づいてくるのが感じられた。
この気配は、味方のものだ。
戦闘に備えて構える必要もなく、気配のする方へ目を向ける。
すると、何やら目を輝かせながらこちらに向けて足早に近づいてくる11が窺えた。

「11、どうしたの?」
「ティナさんっ、かわいいです!」

近づくなり、ティナの手を握り締める。

「え…えっ?」

11の行動に状況が飲み込めないティナ。

「髪、下ろしてるの初めて見ました。素敵です!」

その言葉に思わず頬を染める。
確かに彼女の前では髪を解いた姿を見せたことは無いが、いきなりそんな事を言われるなんて、嬉しくもあり、なんだか少し気恥ずかしい。

「あ…ありがとう、11。…それで、どうしたの?
私、まだ生成は必要ないみたいなんだけど……」

そう言い首を傾げるティナに、一瞬きょとんとした後、「あ」と何かを思い出したようだ。

握り締めていた手を離し、両手を目の前にかざす。
生成だろうかと、ティナはそれを見つめる 。
しかし、いつものように素材を準備するわけでもない。
何があるのかとただ黙って見ていると、手に現れた淡い光の中から何やら白い物体が浮かび上がってきた。
なにやら見覚えのある、この白いモノは…。

「ティナさんの大好きなモーグリ!…のぬいぐるみです!」

自信満々に、出現させた大きなモーグリを手に取り、ティナへと渡す。

思わぬ貰い物に驚きを隠せないままモーグリのぬいぐるみを受け取り、その感触を手に獲る。
本物に負けず劣らず、フカフカでモフモフだ。
抱いて寝たらどんなにいい気持ちだろう。

「余計なお世話かもしれないですけど、ティナさん最近元気ないように見えたので……。
ちょっとでも癒しになればと思って」

ご迷惑でしたか?と11。

「うぅん、とっても嬉しい」

モーグリをぎゅっと抱きしめる。
いくら生成士とはいえ、素材の見当も付かないぬいぐるみの生成など困難だったことだろう。
迷惑だなんて、ちっとも思わない。
それどころか、戦いに明け暮れ疲れた心が癒される。
なんだか胸の奥が暖かい。

「ありがとう、11。大事にするね」

抱きしめたモーグリに顔を埋める。
今夜は久しぶりに、ゆっくり休めそうだ。

-end-

2009/3/18




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