あの後、並盛山に行ってきた。
山間部にある吊り橋を案内されて何で山に連れてこられたのかを理解した。高い場所、が屋上と共通しているからだと思う。後々聞いたのはあの吊り橋は恐怖スポットとして有名らしい。それを知っていたら行かなかった。

また変な事があって危なくなるといけないので隣には雲雀さんがいてくれた。ゆっくりと吊り橋に近づいたら徐々に視界がグルグル回りだし、結局吊り橋にはたどり着けずに帰ることになった。
やっぱり高いところに行くとそうなる様で。

グルグル回っていた視界に頭が少し痛くなり、少し休む為に雲雀家に帰宅。私はそのまま家にいることになったけど雲雀さんは少し用事があるらしい。何かあった時に連絡をする為に携帯を差し出してきた。
思わず雲雀さんと携帯を交互に何度も見てしまうと使ってないやつだから、と携帯を手渡されて私はポケットに入れる。

「2時間もしないで戻るつもりだから。僕が出たら鍵を閉めて」
「わかりました」
「…敬語」
「あ、また使ってた…。行ってらっしゃい」

気を抜いていたらまた癖で敬語が出ていたのをすぐに指摘してきた。すぐに言い直したからかフッと笑っていた。

「行ってくる」

雲雀さんが出て行った後、指示通りに鍵を閉める。そのまま玄関に私は立ち止まって居た。

「行ってらっしゃい」なんて言う事になるとは思ってもいなかった。まるで居場所をくれたみたいで、そう思ったら少し嬉しかったけど、いずれは記憶を戻して元の場所に戻らなくてはいけないことが寂しかった。

何も分からない、知らないの状態は怖いから記憶は戻したい。記憶を戻して不安な状態から抜け出したい。

でも記憶が戻ったらいずれは此処を出る。あまり愛着が湧いてしまわない様にしなければ出て行く時に悲しくなってしまう。いつまでも此処に居たくなってしまう。

記憶が戻ったら雲雀さんは私に会ってくれるのかな。


つい静かだと色々と考えてしまうのは悪い癖だ。勝手に考えてしまうのはあまり良くないと我ながらに思う。

気を紛らわせる為に何かしよう。
そうだ、リーゼントさんが用意してくれた衣類を見なきゃ。


やる事をみるけて自室に戻ろうとすると家のインターフォンが鳴った。

「雲雀さん、なら自分で入ってくるよね?」

静かな空間に何度もなるインターフォン。出た方が良いのかな?
でも雲雀さんなら誰か来るとかの予定をしっかり把握してる気がする。

「どうしよう…」

雲雀さんが不在なのを伝えてまた来てもらように伝えれば応じてくれるだろうか。ただ知らない人と話しをするのは怖いので外の人がどんな人かを確認だけしようと玄関をそーっと開ける。
ほんの少し開けたところでドアがガッと勢いよく開くいて黒い人影が見えたが、何かスプレーを顔にかけられて記憶途切れた。

記憶が途切れる際に、私はまた迷惑をかける様な事をしてしまったんだと理解した。










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