ーーーピッ、ーーピッ、ーーーピッ 重い瞼をゆっくり開くと白い天井が見え、なんだか前にも似たことがあったなぁと感じてしまった。そのまま顔を動かして周りを見ると心電図が電子音を鳴らしていた。 独特の匂いに、ここが病院だと気付かされる。 私、生きてる。 手をゆっくり動かして力が入ることを確認し、体も起き上がらせるとどこにも痛みはない。 起き上がらせたところで隣に雲雀さんが座っていることに驚いた。パイプ椅子に座り、腕を組んで雲雀さんは静かに寝ていた。 また迷惑をかけてしまった。 一体どんな状況で私が今此処に居るのかは分からないがまた迷惑を掛けてしまったには違いない。 「雲雀さん」 聞いていなくても良い、私の自己満足で一方的に伝えたくて口が動く。 「雲雀さん、私、屋上に行ったんです。でも何も思い出せなくて…」 別に返事が返ってくるとは期待してない。それでも私の頭は何も考えずに思ったことを口にしてしまっている。 「外を眺めて見ようとフェンスに近づいたら強い目眩がして、外に記憶の手がかりがあると期待したんです。期待というか…、焦っていたのかもしれません」 焦っていた、という言葉にしっくりくる。記憶の手がかりがない私は早く少しでも手がかりを見つけたかった。いつまでも手がかりが見つからないと不安だった。 「いつの間にか、飛び越えたわけじゃないのにフェンスを越えていて…。またご迷惑をおかけして…」 そして今に至る。生きていた、怖かった、迷惑をかけた。様々な感情がグルグルと回っている。 「なるほどね」 自分以外の声は何ハッと顔を上げると雲雀さんと目があった。いつから起きていて、話を聞かれていたのだろうと不思議だったがきっと初めから。 「僕も2回目があるとは予想してなかったよ」 「…2回目?」 「君が屋上から落ちてきて、また僕が下で受け止めたんだ」 知らなかった、また助けてもらっていたなんて。 私は落ちている途中で気絶をしていたんだろう、何も覚えてない。 「ありがとうございます…。すみません」 「別に。待っていれば良かったのに」 私は私のことしか考えていなかった。だからあんな行動をしてしまったんだろう。屋上に出たら雲雀さんを待っていれば良かった。 情けなさや後悔で泣きそうになり、下を向く。 どこの誰だかわからない事が不安だった。 情報が出てこない私は本当にこの世界に存在しているのか。A山A子は存在しているのか。 それと同時に、記憶の手がかりが無いことを雲雀さんに知られたくなかった。 私の口から出て行く本音を雲雀さんは黙って聞いている。怒っているのだろうか、呆れているのだろうか。 「君は不安を表情に出さなかったなら大丈夫だと勝手に思い込んでた」 君も怖かったんだね、と静かな呟きが自分の心にストンっと落ちる。 怖かった、と再び自分で言葉にすると静かに涙が零れた。 05 |