オハヨウ!オハヨウ!

ぎこちない日本語とパタパタパタッと羽を動かす音がすぐ近くで聞こえた。
徐々に意識が浮上して起きなければと体を起き上がらせて声の主を見ると黄色い鳥がいた。どう見てもインコには見えないけど、喋る種類なのかな。黄色い鳥は全てヒヨコだと思っていたけど、飛んでいるし…。

私はかなり深く眠っていたらしい。何か夢を見た気もするけど全く覚えていない。今の私にとって覚えいない、というのはとても嫌に感じてしまう。


私は記憶喪失、というものなのだろう。

どこに住んでいた、どうやってこの町に来た。家族や友人も全く覚えていない為、記憶が戻らない限りどうすればいいのかがわからない。
唯一、A山A子という自分の名前が出て来た事はあの人にも伝えている。

空から落ちて来た私を助けてくれたのは雲雀恭弥さんという名前だとも教えてくれた。
私は雲雀さんの家にお世話になることになり、家は私の想像を遥かに超えていて、まるで名家のようなお屋敷だった。本当にお部屋まで貸してくれて、しばらくは生活をしていいとのことに感謝している。
知らない人間にここまで…、と思ったがあの人は私が空から落ちて来たことに興味があるらしい。本当に空から落ちてきたのかもわからないけれど、興味があるから私についても調べてくれるそうだ。

ワイシャツがシワになるといけないから、と家の方が寝巻きを貸してくれた。ありがたみを感じながら再度ワイシャツに着替え、部屋を出る。


部屋を出て左右を確認するがどちらに行ってもわかる気がしないので、たまには直感を頼って右に行くことにした。
私の肩にはいつの間にか鳥が乗って歌っていた。この鳥は賢い様で色々な歌を歌い出す。


「みーどーりーたなーびくー」


歩き始めて間もなく、オトモの鳥が大声で同じ歌を繰り返し始める。ビックリした、本当にビックリした。


「ここに居たんだ」


後ろからの声に更に心臓が跳ねて振り返ると学生服を着た雲雀さんがいた。

「勝手にウロウロしないでくれるかな。手間が増えるんだよね」
「部屋を出て10歩も歩いてないですけど、ドア見えます」

私の話を聞いているのかいないのか。雲雀さんが私の前を歩いていく。後をついて歩きながら私は周りを見るが広すぎて家の中すら覚えられる自信がない。


しばらく歩き、縁側に出る。天気も良く日が当たり、綺麗な庭に落ち着く。縁側には1人分の食事が用意されていて、雲雀さんは「ここで食べなよ」と縁側に座る。

「え、雲雀さんは食べないんですか?」
「今何時だと思ってるの?」

私は随分と遅起きだったようで14時を過ぎていた。
申し訳ないなぁと思いがらもお腹は正直に鳴っていたので私も縁側に座って「いただきます」と手を合わせて食べる。和食美味しい。


「調べたけど、何も出てこないよ」

突然切り出されて噎せそうになった。話に主語がなく一瞬考えたが私について調べてくれたらしい。

「名前あってるの?」
「A山A子です、それは合ってます」
「可笑しいね、1つも出てこないなんて」

まるでこの世界の人間じゃないみたい、何て今は冗談に聞こえない。空から、とうい話がある限りその可能性だって無いとは言い切れない。そういうのを信じているわけでは無いけど。

「もう2時だよ」
「え、急に何ですか?」
「仕事が溜まった」
「それは…」

すみませんと謝ると「別に」と返しながら欠伸をしていた。ところで学校は?とか聞くと後から行くらしい。
いや、そうじゃなくて授業は?




02




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