「名前先輩!これ固定テープじゃなくてキネシオテープですよ。」
「えっ、えぇ?」
「ホラ。」
「…あ…。」

部室でやり取りされる女子マネージャーの会話。察するに、どうやら名前が買うものを間違えたらしく、後輩マネに指摘されているようだ。

「ご、ごめん!交換してもらってくる!」
「あ、先輩!交換するもの持ってかなきゃ意味ないですよ!!」

心配なので私も行きます、と保護者のように付き添われるのを見て、正直どちらが先輩後輩か分からねぇと思った。




「(うわぁ、またやってしまった…。)」

後輩のフォローのおかげで無事備品を揃えることはできたが、非常に申し訳ない事をした。一応、最高学年のマネージャーなのだが、後輩マネージャーの支えによって何とか仕事を全うしている状態である。(昔、不甲斐なくて申し訳ないと謝ったら、それが名前先輩らしさですよ、一生懸命な所好きですよとフォローしてくれた。本当にできた後輩だ。)
雑務は苦手だけど、頼りっぱなしではいけない。他に何か自分にできる事があるはずだ。そう思い立って、選手を支える為の知識を増やそうと決意した。




「ナァニ熱心に読んでんだヨ?」
「わっ!なんだ、靖友か、びっくりした。」
「なんだじゃねーよ、こっちがビックリしたよ。本なんて珍しいな。」
「ふふっ、今勉強中なんだ!」

ジャーン!と効果音付きで見せられた表紙は「テーピングの巻き方」と記されていた。

「私、仕事あんまりできないでしょ?だから知識を増やそうと思って!効果的なテーピングが今よりできるようになったら、もっと選手のみんなをサポートできるしね。」

そう目をキラキラ輝かせて話す名前が眩しい。おっちょこちょいなんて性質だから簡単には変わりはしねェ。それでも自分のできる事を、コイツなりに色々考えてんだなってちょっと関心した。

「で、今はどんなヤツ読んでんのォ?」
「コレ!」
「なになに………名前、これ外反母趾に効くやつな。」
「え、アレ?意味ない…?」
「あ〜いや、足の指外向くと痛くなるな、長距離とか特に痛いからよ、今度名前にソレやってもらおうかなって」
「任せて!!」

とっさに紡ぎだした自分でもよくわからないフォローに、名前の表情は再び輝きを灯して。自分の足の指の向きを思い出せずにいたが、この笑顔が見れるなら、足の指が内側に向けられても構わねェかなって思っちまった。




「先輩、最近しっかりしてきましたね!」
「やっと名字もマネージャーらしくなったな!」
後輩と東堂君のこの言葉は、けなしているのか褒めているのかよくわからないけど、嬉しい。
最近自分の仕事に、より自信が持てるようになった。まぁ今更かよ、と言う感じもしなくもないが。ケガがクセになっている選手のサポートも覚えたし、トレーニングの組み立てもある程度提案できるようになった。
もちろん自分の力だけではなくて。後輩の助けもあるし、実は靖友の助けもある。テーピングの練習に付き合ってくれたりとか、色んな本を貸してくれたりとか。
「別に今までのまんまでも良いんじゃねぇのォ?」って言ってくれたけど、やはり、確実に選手たちのサポートができている事が嬉しいのだ。

「お疲れ様!!」

ロードから戻ってきた選手たちにボトルを回していく。こう言った雑務も最近ミスなくこなせてなんだか調子が良い。

「うぅっ!ごほっ!何か今日のドリンク濃…!!」

あ、あれ…?

「ナァニやってんだヨォ?」
「あ!靖友!!私、黒田君のドリンクの粉の量間違えちゃって…!」
「アァ!?そんぐれーでゴチャゴチャ言ってんじゃねぇぞ黒田ァ!」

黒田君のドリンクボトルを奪いグビグビグビっと飲み干す。

「え、ちょっと大丈夫なの?」
「ハッ、何ともねぇよ。」

驚く私を軽くあしらい、唖然とする黒田君に「ホラヨ。」と自分のボトルを渡す。

「靖友…本当にごめん…!私、やっぱり全然ダ「うっせぇ、らしくねーこと言ってんじゃねぇよ。」

私の言葉を遮り、グシャっと頭をなでる。

「誰も名前に完璧を求めてねんだヨ。」
「えぇっ、それはそれで…」
「何とかしようって色々考えてんだろ?そんで良いの。一番に部の事を考えてくれるのが名前だから、それが良いんだよ。」
「う、うん。」
「それに明るさがオメェの持ち味だろ。だぁからホラッ、さっさと切り替えろ!」
「うん!!ありがとう靖友。」
「おぅ。」

にかっと歯茎を見せて笑った靖友にまた頭をぐしゃぐしゃ撫でられてお互い部活に戻った。

また迷惑をかけてしまうかもしれない。でも、自分の元気までを殺したくはない。だから、私は私なりの方法で部のみんなを支えていこうと思った。
もちろん、靖友も!!




(荒北さん、名前先輩の扱い上手いですよね)
(上手いっていうか、甘いな)
(靖友、名前大好きだもんな)
((((確かに))))


Toアララさま
リクエストありがとうございます!!
天然マネ、と言うかおっちょこちょい要素が多めかもしれせん…
靖友君はきっとオカンな感じで面倒見よさそうだなと思って書きました。
彼の愛情はとっても大きいと思います!!
何かご意見などございましたら、遠慮なく言ってください^^







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -