これを人生最大のピンチと言ったところだろうか。今私は大男二人に壁際に追い込まれ囲まれて、どうにもこうにもいかない状態である。

「で、どっちにするワケェ?」
「そりゃ俺だろ。俺の方が早く誘ったんだし。」
「ア?約束取り決めたワケじゃねぇだろうがヨ。」

私の目の前と言うか頭の上でギャースカ言い合いを始めた二人はチャリ部の新開君と荒北君。どうやら私は来週の日曜日、どちらか二人と遊ばなければならないらしい。

「あのー、もういっその事3人で映画とかでも行ったら良いんじゃないかな?」
「「それはダメだろ。」」

仲良いなコイツ等、と思うくらいには息ピッタリだ。しかし一番良いと思った折衷案は二人によって却下されてしまった。


最近どうも、この二人にからかわれている気がする。そもそも知り合ったのは最近で(選択授業が同じだった)、名前がちゃんとわかったのもそれからだ―――――

『やっぱりあの二人カッコイイよね。』
『あの二人?』
『荒北君と新開君だよ、自転車競技部の。』
『えーっと…』
『え、知らないの?』
『チャリ部の人は何となく分かるけど、顔と名前が一致しない…。』
『信じられない。ホラ、あの二人だよ。』
『あぁ!いやでもイケメンか?一人は目つき悪いし、もう一人は唇オバケじゃん。』
『悪かったなァ、目つき悪くてヨォ。』
『えっ、あ、』
『唇オバケとはヒドイな。俺は新開。こいつは靖友。ちゃんと覚えてくれよ。』


―――――とまぁこんな感じでファーストコンタクトは大変失礼しました状態だったんだが、それからは割と話したりするようになった。
しかし自分はあまり男子に興味がないと言うか、正直な話、苦手である。普通に挨拶や話す程度なら問題ない。なんと言うか、「男」と意識してしまうと途端にダメなのだ。

「なぁ、名字チャン?」

肩に回された手。それがダメなんだよ荒北君。

「3人で、なんてそんなどっちつかずな態度ダメに決まってるだろ?」

新開君もそんな簡単に髪の毛触らないでくれ。
二人とも、私基準のラインを越さないでくれよ。他の子と比べたらその基準はとても低いんだろうけど、でも、私にとっては大問題なんだ。もっと普通に話すだけで良いのに。

「名字チャンて男嫌い?」
「いや、嫌いとかじゃないけど…。」
「じゃぁそんな怯えなくったってイイんじゃナァイ?」
「で、でも…。」
「嫌いじゃないけど、慣れてない、だろ?靖友に肩触られてビックリしてたしな。」

さすが新開君、と言いたいけど分かっているのなら距離の取り方を考えて欲しい。

「でもな、余計に見たくなるんだよ、」

そう言う顔。と、ぐっと新開君の方へ引寄せられ、耳元へ低い声がかかる。

「男に触られた事もあんまりないんだろ?」
「あ、のさ!ちょっと!言いたいことは分かった!だからって太もも触るのはどうかな?」
「良いだろ、なぁ靖友。」
「良いわけねェだろバカ新開!」

パシッと新開君の頭を軽く叩いた荒北君を、初めて心強いと思った。助けて荒北君。

「名字チャンばっか触られてたら不公平に決まってンだろ。しかも新開ばっかヨォ。」

おいおいちょっと待て。

「触られンの、慣れてねぇんだろ?じゃぁ触るのはどうだ?」

ひた、と荒北君の胸板へと持って行かれる私の手のひら。胸から腹へとなぞると、制服の上からでも筋肉の凹凸がわかる。感動したのもつかの間、瞬時に筋肉のラインが脳内で裸の映像へと変換されて何とも言えない気持ちになった。

「名字さん顔真っ赤ー。」
「なぁにヤラシイ想像してくれちゃってんの?俺の体で。」
「ち、ちが…」
「それは妬けるねぇ。俺ので想像してくれても良いんだけど。」

私の髪を耳にかけながら、息がかかるくらいの距離で呟く。すごく生々しい感覚なのに、上手く拒否できないと言うか……

「…なんちゃってな。」
「?」
「悪ィな、名字チャン。もう部活行かなきゃなんねェからまた明日返事ききにくるわ。」
「あ、…」
「何だ、続きができなくて残念か?」
「違うって!ぶ、部活、頑張ってね。」
「おー。」


ヒラヒラと手を振る二人を見送り、ホっと胸をなで下ろす。しかし明日また返事をしなければならないのか…あの二人が嫌とか嫌いとかではない。嫌いではないのだが…。日曜日に一日中二人きりでいるなんて到底無理だと感じてまた少し気が重くなった。



――――――――
Toみきさま
こんにちは!リクエストありがとうございます!!遅くなってしまって非常に申し訳ないです!!
新開さんと荒北さんが取り合うお話と言うことで書かせていただきました。男子慣れしていない子と言うのが新鮮で書いていて楽しかったです^^
みきさまの思っていた設定に添えていなかったら…すみません!(土下座)
でもこの二人本当素敵なので取り合われたいです…いやむしろ取りにかかりたいです、バリムシャウオォオオォ!!って感じで(^ω^)
では意見などありましたらお気軽にお申し付けください。ありがとうございました!






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