朝練が終わって下駄箱へ。いつものこの時間、必ず彼女は登校してくる。

「ヨォ、名字チャン。」
「!!あ、お、おはよ…!」
「そんなに驚かなっくてもイイんじゃナァイ?」
「うぅ…」

いつも話しかけるとビクってして。声がデケェからか?いい加減慣れねぇのかヨ?ちょっと悲しい。
そんな名字チャンだが、俺たちが友達になったのは彼女がキッカケだ。

あれは2年の5月くらい、クラス替えから1カ月ほどが経ち、だんだんクラスにも馴染んできた頃だった。

「あ、荒北くん!」
「ア?」
「うぁ、あのっ、その…」
「何だヨ?」
「わ、私と、えと…友達になってください!!!」

多分、コレが初めて名字チャンと交わした会話だ。耳まで真っ赤にして、差し出された手。今時こんな風に言ってくるヤツなんて初めてで。でもそれが何だか面白ェっつーか、まぁ悪い気はしなかった。差し出されたを握って「こちらこそヨロシク。」なんて、自分でもらしくねぇと思う返事をしたが、その時に見せてくれた名字チャンの笑った顔は今でも覚えている。

秋ごろになると、以前と比べて話す事も多くなった。下駄箱や教室で会えば挨拶はするし、好きな音楽の話もした。ただ…

「名字チャン、」
「ひっ!」
「そんなに驚くなよ。」
「ご、ごめん!」

俺から話しかけるとどうもビクビクしてやがる。名字チャンは部活の事とか、色々俺の事を聞いてきて。だから俺も色々知りてぇ、って思って話しかけてんのに、いっつもこんなカンジ。正直彼女が積極的なんだか、ビビりなんだか、わかりゃしねェ。
でも、そんな名字チャンが気になったり。一生懸命な感じとか、嬉しそうな顔とか。あと意外と根性座ってるよな。そんなとこが気に入ってる。




「課題終わった?」
「あー…課題、ねェ…。」
「終わってなさそうだね。」
「見せてくれると嬉しいナァ。」
「自分でやんなきゃダメだよ。」
「へーへー、わかってますよ。」
「…ふふっ!ウソウソ、部活大変だもん、手伝ってあげるよ。」
「本当にィ?スッゲー助かる!」
「っあ、うん…!また言って、ね!!」

まぁたビクつかせちまった、と反省しつつ(反省はするが直らねぇ)、教室へ入ろうとしたとき、「荒北君…!」と再び声をかけられた。



―――――昼休み、名字チャンと向かい合って柄にもなく緊張している。

「昼休み、ちょっと良いかな?」朝、こんな風に話しかけられて。
「ちょっと、お話が…」こんな風に切り出されたのが数分前。名字チャンが何を言おうとしているのか分かっている。初めて話したあの時みてェに、耳まで真っ赤になっている。

なかなか言葉は出ない。彼女の事だ、きっと話を切り出すのに物凄い勇気を振りしぼったに違いない。だから、必死に絞り出した言葉を俺はちゃんと聞いてやる。彼女の言うことを、彼女の気持ちを。
彼女が息を吸い込んで、言葉を探して、決意を固めた。

「私、荒北君のこと、好き…なんです…、前からずっと…。友達になってくれたのも嬉しくて。」

嬉しかったのは俺の方だ。

「でもね、友達も良いけど、もう少し深い関係になりたい、です…もっと荒北君の事知りたい。あの、それで、もしよかったら私と付き合ってください…!」

言い終わった後の彼女はとても小さく見えて。ビビリな彼女が振り絞った、大きな勇気が俺にはとても愛おしく思えて。

「名字チャン、顔上げろ。」
「ハ、ハイ…」

なんつー顔してんだ、今にも泣きそうじゃねェか。

「俺の事、もっと知りてぇなら教えてやる。」

デケェ声でビビらせちまうから、いや、恥ずかしいからよ、いつもより小せぇ声で言うぜ?だから、ホラ、もっとこっちへ来い。一番近ェとこで言ってやる。

「好きだ。」

彼女がビクビク震えねぇように、俺の熱を持ったような顔がバレねぇように、強く強く抱きしめて耳元で呟いた。

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To君助さま
こんばんはこんにちは!リクエストありがとうございます!遅くなってしまい申し訳ありません。
小鹿ヒロインちゃんと荒北さんが恋人になるお話でしたが…これで大丈夫ですかね?
なかなか気持ちを伝える事って難しいんですが、いざと言うときに行動にでる人って多いですよね。この小鹿ちゃんもそんな感じかな、と。やると決めたら行くけど、実際はビクビクみたいな。本当、荒北さんと同じで「積極的なんだかビビリなんだかわかんねぇよ!」って人、実際いると思います(笑)
そして荒北さんは努力の人だから、人の努力にも誠意を払うだろう、と。
そんな妄想で今回のお話を作ってみました。
ご意見ありましたら直しますのでお気軽にどうぞ^^







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