slow

「謙也さん、ちょぉ昼ご飯付き合うてくれます?」
「ええけど。」

珍しく財前に誘われ向かった先は女の子が好きそうなカフェ。野郎が2人で来るような場所ではないだろうに…。

「今度彼女とデートなんでリサーチせなアカンのですわ。」
「だからって別に俺やなくてもエエやろ?」
「謙也さんが一番暇そうやったんで。」
「…余計なお世話や。」

とりあえずランチセットのような物を頼んではみたものの、なかなか来ない。何でこんなに時間がかかるのか理解ができない。だからこう言う類のシャレオツカフェは苦手なんや。昼ご飯なんてうまい・はやい・やすいの三拍子揃った牛丼で充分。

「失礼します。」

店員の女の子の声でハッと我にかえる。まぁ今日は仕方がないと思い顔をあげた。
…結構可愛えな。ハキハキとした言い方も気持ちが良い。

「ではごゆっくりどうぞ。」

ニコッと口角を上げた口元に思わず目がいってしまった。彼女がキッチンへ戻っていくまでついつい目で追ってしまい、財前に「謙也さん。」と声をかけられる始末である。

「あぁ言う人が好きなんスね。」
「好きとかちゃうわ。声がよぉ通るなぁって気になっただけ。」
「それが恋の始まりとちゃいますの?」
「、あーもーご飯冷めてまうやん、ほらさっさと食え!」

財前をあしらいながら飯を口へと運ぶ。普段食べ慣れない場所だからなのか、はたまた別の理由なのか、舌先に感じる味覚が麻痺して味が分からなかった。



何だか食べた気がしないままレジへ向かい会計を済ませる。チラリとホールを見ると先程の彼女はくるくると忙しそうに働いていて。レジの「ありがとうございました。」と言う声に反応して彼女も振り返る。

「ありがとうございました!」

ペこりと会釈したら彼女は飛び切りの笑顔でまた返してくれた。

「結構エエ店でしたね。」
「せやなぁ。」
「謙也さんは別の理由かもしれませんが。」
「うっさいわ。あ、オムライスセットとかもあるんやな。」

店をでるときオススメメニューが目に入り、次はこれを頼もうとか思ってしまった自分がいて驚きを隠せなかった。

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