アイスと犬
「あっつ〜…」
猛暑だか酷暑だかわからないが、耐えきれない。溶けそうだ。
昼休みの定位置、屋上で微妙に吹く風にあたりながら、売店で買った棒アイスで、なんとか暑さをしのいでいるところだ。
謙也、まだ来ないのかなぁ。
「名前!何してんねん?」
「え、アイス食べてんだけど」
「見りゃわかるわ、その食べ方や!」
「だって舐めないとアイス落ちちゃうじゃん」
「落ちちゃうじゃんやないわぁ…なんか…その舌使いはダメやろ…やらしいわ!」
「きもっ」
暑さで頭がわいているんじゃないだろうか。
かわいそうな男だ。
「はい、謙也も少し食べなよ」
気を取り直してあーんとアイスを謙也の口まで持ってくと、うれしそうにアイスにかぶりついた。
「なんか謙也って犬みたいだね」
「こんな優秀な犬おらへんで」
「はいはい」
再びアイスを食べようとしたらポタっとアイスが指に落ちた。
「わっ、垂れちゃった」
慌ててティッシュで拭こうとしたら謙也に腕をつかまれ、アイスが垂れた指をべろっと舐められた。
しかも驚いてアイスを落としてしまった。
「ちょっと!?」
「ん?犬っぽいんやろ?」
いや、うれしそうに餌もらってる犬みたいって言いたかったんですけど!
そんな私をお構いなしに、謙也は私の指を舐め始めた。
「名前の指、めっちゃ甘いわ」
指をなぞられるように舐められたり、咥えられたりする。
アイスは下に落ちたのにも関わらず、ちゅぱっと音を立て執拗に舐められ続けた。
これはマズイ。
「謙也…だめだって…」
「なんで?」
「なんで、ってそりゃ…」
「…アカン、ガマンできん」
「はい?」
「全部舐めさして?」
そう言って腕を引っ張られ、空き教室へと連れていかれた。
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