heart beat

イメージにそぐわず、謙也くんは意外と男らしいと思う。男らしい、と言うか恥ずかしげもないというか。普段ヘタレだの何だのボロカスに言われているが、彼が本当にヘタレならばこんな風にベッドの上で、堂々とパンツ一丁でいるわけないだろう。

「ホラ、今度は名前ちゃんの番やで。」
「番やで、って何の順番だよ。」

んー、脱ぐ順番?なんて言いながらヘラッと笑う謙也くんの辞書には羞恥と言う言葉はないのであろう。おずおずとTシャツを脱いでみると、物凄く嬉しそうな犬みたいな顔した謙也くんがこちらを見ていた。

「…あんまり見ないでよ…。」
「なんで?」
「なんでって、恥ずかしいじゃん…。」
「なんでそんなに恥ずかしがるん?」
「なんでって…」
「恥ずかしがる必要ないやろ?俺と名前ちゃんの仲なんやし。それにきれいな肌しとるんやから、もっと見せてくれればエエやん?」

やっぱりこの人には「恥ずかしい」と言う観念がないのだろう、こっちが恥ずかしくなってしまう。
目線を、次の行動をどうすれば良いのか、なんて考える間もなく謙也くんに押し倒されてしまった。触れ合う上半身の肌と肌。絡み合う指と指。逸らした目線は空いた手によって半ば強引に謙也くんと合わせられる。

過去にこんな近くで人と、他人と触れ合ったことがあっただろうか。こんなにも他人の体温を体全体で感じたことがあっただろうか。こんなにも力強い目線で、真っ直ぐ私を見た人がいたのだろうか。
私は彼のように自分を保てるほど強くはない。肌が触れ合って、鋭い目線に射抜かれて、強く香りを感じて、もういっぱいいっぱいだ。心臓が、心が、今にも壊れそうなほど反応している。

「名前ちゃん、顔真っ赤や。」
「う、うるさい。」
「目もなんだか潤んどるし。」
「うぅ…」
「あと名前ちゃん、すごいドキドキしとるね?」
「も、どこ触ってんの…それに言わなくって良いよ…。」
「可愛いから言いたくなってしまうんや。それにほら、分かる?」

絡めていた指をほどいて、そのまま謙也くんの胸へと誘われる。少し汗ばんでいて、でもしっとりした胸板に手を置いて彼の音を指で感じ取る。手のひらに感じる心音は力強く、とても大きく、そして何よりも速く脈をうっているのを感じた。

ドックンドックンドックンと脈打つ彼の心臓の音は、それまでの彼の態度や口ぶりとは大きく違っていて。何だかアンバランスと言うか意外で思わず笑みがこぼれてしまう。

「な!名前ちゃんを見て、触って、凄いドキドキ言うてる。ドキドキしとんのお揃いや。」

そんな屈託のない笑顔でまた恥ずかしいことを言うもんだから、私はまた心をかき乱されてしまうのだけれど。


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