閉じて塞いで

目の先に広がるは真っ暗闇。
耳につくのは苦しみを含んだ乱れた息遣い。
体に走るのは痛みにも似た快楽。

「はっ、アっ…!」

体の深部をえぐられて一瞬意識を手放す。全身に回る痺れ、とめどなく沸く情欲。手探りでユウジの顔を探して頬に手を沿えたが、制止され頭の上で纏められる。

「ユウ」
「うっさい、だまっとけ。」

ギシッ、ギッギッと、声を掻き消すようにベッドは軋んだ。ただただ玩具のように抱かれる愛のない行為。それでも私の体は濡れて、乱れて、ユウジを求める。
ユウジとは所謂体だけの関係で。私の気持ちをユウジに打ち明けた時からこの関係は始まった。

「俺が好きならセックスできるやろ?」

ユウジが見てくれるなら望む事をしよう。そして幾度か肌を重ねる事となる。しかし私とユウジのお互い視界を塞いで行為に及ぶのだ。
まさぐり、手探り合いながら繋がる(主にユウジのペースなんだけれども)。相手を見る事もしなければ、呼ぶ事も許されない。余計な情報は一切排除した上での性行為なのだ。
傍から見れば不道徳的であろう。それは自分が一番良く分かっている。しかしこの瞬間だけは彼を自分のものにできる。その感覚だけに捕われて私は動けずにいる。

「オラ、もっと締まるやろ?」
「や!ぐりぐり、やめ…」
「嘘付くなや。奥がエエんやろ、な?ホラホラ。」
「ーッ!!」
「ハハッ、ごっつう締まったわ!ビクビクしとんのわかるやろ?」

名前は呼んでくれないくせに、自分の事は語ってくれないくせに、行為においては饒舌だ。そして私もその口車に翻弄されて何も返せない。今、一番正直なのは欲望に忠実な身体だけだろう。お互いに。結合部の粘着質な音と声にならない声がひどくうるさく聞こえる。

「ダメ、ダメ またイっちゃ、あぐっ…あぁ!」
「は ンン゙ 俺も、」
「あ!ユウ ジ、ぃ」
「ーーー、ッ!」

咄嗟にユウジを呼んでしまった。ユウジの口からは誰かを呼ぶ声が聞こえた。
誰かの名前。

塞がれた視界ではあなたの気持ちは見えない。
雑音だらけの世界ではあなたの声は聞きとれない。

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