けのはなし

※スネ毛やら腹毛やら陰毛の話なので苦手な方注意





夏だ夏だ。衣替えも終わり日差しも強くなったこの頃。肌の出る面積は増え、気にすることも増える時期だ。足が太いだの腕が太いだので、あぁダイエットしなきゃなとか、日焼け対策しなきゃとか。
そして面倒なのがムダ毛処理である。女子に生まれた宿命だから仕方ないのであろう、しかし本当に面倒くさい。
なぜツルツルでなくてはいけないのか?人は昔、猿ではなかったのか。そこまで昔の話でなくとも、女性が毛を剃らねばならないルールはなかったはずだ。誰だこんな面倒なルールを定めたヤツは。
ふと視線落とすと、ズボンの裾を捲りあげた男子の足が見える。潔いほどボーボーに生えたすね毛も見える。うらやましい、その自然体でいられることが。よくよく考えれば男子って化粧もしなくて良いしうらやましい事ばかりじゃない?なぜ私は女に生まれたんだ。なぜ私はアンチ・ムダ毛のこの時代に生まれたんだ。

「オイ、名前、何マヌケな顔してんだヨ。」
「あぁ、荒北…。」

ハァ、とため息をつくと「意味わかんねーヤツだな。」と生意気な言葉が返ってきた。
憎らしい口調とともに目の前に現れた三白眼男を、上から下へと視線を下げるとまぁコイツもズボンを捲っていて。しかし他の男とは違ってツルツルである。自転車競技ではどうやらスネ毛を処理しなければならないらしく、以前「大変だねぇ」と話したことがあるのを思い出した。

「荒北も難儀な部活に入ったもんだね。」
「いや、何の事かちゃんと言わねえとわかんねんだけどォ。」
「あのね、かくかくしかじかで……………まぁつまり面倒臭いよねってこと。」
「アァ、まぁ確かにな。でもよ、俺とか自転車部の奴らは見た目じゃねぇからともかく、女子のムダ毛はやっぱりねェだろ。」
「んー…。」
「すっげぇ美人でスタイル抜群のモデルの足がモッサモサだったらどうよ?」
「うわぁ嫌だね美しくないね!」
「だろ?」

いや待てよ、もし「毛=美しい」みたいな風潮になって私の価値観も変わってしまった場合はどうだろうか…いや今この時代に風潮の変化を求めるのはやはり無謀で無意味で…

「おっ、名前難しそうな顔してるな。靖友にでもいじめられたか?」
「違ぇよ新開。名前もまーだ何か考えてんのか?」
「毛ェ…。」
「髪の毛の事かい?」
「ううん、ムダ毛…。新開の脚もちゃんと剃って…おっとそれは剃り残しかな?」

内側にちらりと見える毛を指摘するといたずらっ子みたいな顔して「バレたか。」と誤魔化していた。

「まぁ剃るのなんて大体だよ、大体、な、靖友?」
「いや、オメーがだだくさなだけだろ。」
「荒北は本当キレイだよね、もともと毛が薄いんじゃない?」

新開は何かこう剃りました!って感じがするけど、荒北は毛根が目立っていないと言うか女性の脚でもイケる気がする(筋肉を除いて)。しかも割と几帳面に手入れとかしてそうで。私より脚キレイなんじゃないのか?

「新開は逆に濃そうってかしっかりしてそう。」
「ん?そうか?どうだろ??」

そう言ってベロンと制服のシャツを捲ると、新開の見事なシックスパックスの腹筋、そして予想していたよりも立派な腹毛に思わず感嘆の声が漏れた。

「すごーい!!『男の腹!』って感じがする!!肉厚!しかも荒北こんなに腹毛生えてないよ!!」
「ウッセーよ!」
「ギャランドゥって感じだろう?」
「うんうん!ね、ね、触ってみて良い?」

どうぞ、とズイっと前に出てきた新開の腹を触る。凄い。モリモリでもじゃもじゃ…と上から下へと撫ぜていくとパンツのゴムにたどり着いた。行き止まりだ。

「あの、パンツによって行く手を阻まれたんだけど、このモジャモジャ君は最終的には…」
「もちろん、俺の息子まで「ハイハイストップ!!いい加減にしろよテメーら!!」」
「えーケチ。」
「ケチじゃねぇ!」
「靖友も見たいの?」
「誰が野郎のチン毛見て喜ぶんだよ!!」

私は喜ぶぞ、とここでは言わない方が良いのだろう。そんな雰囲気だ。

「大体名前もヨォ、俺の前で新開ベタベタさわりやがっていい度胸してんじゃナァイ?」

お?珍しく荒北が嫉妬してる…?

「いっつも恥ずかしがって遠慮するくせになァ。そんなに見たけりゃ見せてやんよォ。」
「いやその恥ずかしがるのは見るんじゃなくて見られることで…ん?見せてやるよって…。」
「ヒュゥ!アツいな。」
「うっせ!!」

ホラ行くぞ、と手を引かれて連れて行かれるのは何処か。見送る新開のバキュンポーズの意味は「仕留めろよ」なのか何なのか。とりあえず、めんどうだと言いながらも昨日ちゃんと処理しといて良かったと思いながら荒北の手を握り返した。


(名前のもちゃんと見せろヨ。)
(いや、さすがに下は剃って無いって言うかそれやったらパイパン…)
(わーってるよォ、ジョリジョリで良いからァ。)


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