kiss me5

学校が終ってさっさと家に帰ろうと校門を出ようとしたら待宮に遭遇した。最悪。ツイてない。
「のう名前ちゃん〜ヒマじゃろ?今日部活オフなんじゃ。これからワシとデートせんか?」
「嫌。」
「何でじゃぁ。」
「何でって…って言うか私じゃなくて他の子誘えば良いじゃん。」
「ワシは名前ちゃんが良いんじゃ。」
ホラ、こうやって軽々しく女の子が喜びそうな誘い文句を言う。一体何人の子に言ってんだか。
ホラ、そうやって簡単に肩に腕回して馴れ馴れしく触ってくる。ぐっと肩を引き寄せられ、私の意志に反して待宮の方へ足が進む。あぁもうダメだ。こうなってしまっては逃げられない。
「…デートはしない。」
お持ち帰りコースは目に見えてるから。
「ちょっと遊ぶだけなら…。」
私も大概軽々しい女だ。

*

オフの日の部室は静かだ。静かな部室しか知らないのだが。私は自転車部でもないのに何度か出入りをしている。今日も待宮と少し「遊ぶ」為に。

「名前ちゃんたまにはデートしてくれんかのぉ。まぁワシはこうやって二人きりでおるのも好きじゃけど。」
そう言いながら待宮は私の肩に顎を乗せて、鼻先で私の頬をくすぐる。ちゅっと顔に似合わない可愛い音を立てて頬にキスをしてきた。
「名前ちゃん…」
名前を呼ばれ待宮の顔を見るといつものヘラヘラ不細工顔じゃなくて。顎を捕まれて乱暴にキスをされた。
待宮はいつもこうだ。ヘラヘラして近づいて、自分のテリトリーに相手が入ったら本性を現す。ペテン師って言葉が本当にお似合い。

しかしやはり女を騙せるだけあってキスは上手いと思う。唇をあまがみされ、舌先を徐々に中へと侵入させられる。歯列をなぞり、待宮の長い舌は容赦なく私の中をはいずり回るのだ。
「ふっ…、ちゅ、ん」
上手く息継ぎができなくて苦しい。差し込んだ舌に待宮の犬歯が当たって痛い。苦しくて痛いキス。何が苦しいの。何が痛いの。
騙されてはいけない。騙されてはいない。
本当に?
「待宮、」
舌が離れて少し寂しく思ってしまう。
「名前ちゃん、もう少し遊んでくかのう?」
「うん、すこしだけ…。」
「カワエエのぉ、大好きじゃ。」
どこまで本気かわからない言葉。いやこの男が本気で言うはず無いだろう。そんな事を考えていたら、いつの間にか再び待宮との距離は無くなって。

詐りの甘い言葉。詐りの甘い愛の確認行為。分かっている。
分からないのは、私の、自分の気持ち。

何故苦しくて痛いんだろう。

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