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「おはよう、荒北くん。」
「あァ、名前チャン。はよ。」

どかっとカバンを置くと、バサっと本が落ちた。
「あれ、これって…。」
「ンァ、わりぃ。」
「荒北くんこの本好きなの?」
「まぁまだ読みかけだけどな。」
「私も好きなんだよ!読みやすいけどすごく面白いし。良かったら本貸そうか?」
「それならお言葉に甘えさせてもらうわ。」

荒北と意外な接点ができた。彼とは席が隣になって、話す回数も増えたのだけれども、なかなか接点らしい接点が見つからなかった。正直、荒北が本を読むなんて珍しいと思っていたが、チャンスだと思って今度その話題を振ってみようと思った。





新しい本を借りようと、放課後の図書室に向かうとドアの前に荒北がたっていた。

「珍しいね。部活は?」
「今日はオフなんだよ。初めて図書室来たけど結構本があんだナ。」
「初めてって今まではあまり本読まなかったの?」
「まァそういうこったな。」
「最近なんだ、なんか嬉しいな。」
「何で?」
「だって本の事とか荒北くんとたくさん話できるじゃん!」
「あー…。」
「あ、ご、ごめん!ちょっと馴れ馴れしかったよね。」
「いや、別に嫌じゃねぇからよ…。」

荒北が照れくさそうに頭をかく。

「俺って言葉にすんの苦手なんだよ。だから今の嫌じゃねぇって言うか…。」

名前が目を丸くして荒北が話す言葉を見守る。

「まぁもっと話せたらと思って本読み始めたから。」
「え?」
「だから改めて言われると恥ずかしいんだケド。」
「そ、そうなんだ、ごめん!!」

あれ、でも話すためってなんかそれって…心臓の鼓動が速くなるのがわかる。

「名前チャン、意外と恥ずかしい事も言っちゃうんだなァ。」
「いや、なんかポロっと出ちゃったっていうか、荒北くんと話したいし仲良くしたいって思ってたから嬉しくって…。」
「ハハッ本当、気持ちを隠せねぇみたいだな。」
「うぁーもう…!」

荒北こそ恥ずかしいこと言ってるとは思ったが、自分の気持ちが筒抜けになっているようで何も言えない。

「まァ、でも俺も同じ事思ってっから。」
「…え?」
「名前チャンと同じ事。」
「同じって…?」
「俺、気持ちを言葉にすんの苦手なんだわ。だから名前チャンの思いをまず教えてくれナァイ?」
「え!ズルいよぉ…。」
「ズルかねェよ。言わなきゃこのままだな。」
「う…。」
「まァ、また今度でも良いんだケド?」
「え、それはちょっと…。」
「じゃぁどうする?」

あぁもうだめだ、と悟り息を大きく吸って覚悟を決める。

「…わ、私、あ、荒北くんが、好き、です…。」
「……。」
「あ、荒北くんは…?」
「俺は…」
「…?」

「…名前チャンが大好き…。」


(言葉にするのはなんて難しいのだろう)
(しかし、言葉にして初めて伝わるものがある)
(だから言葉が生まれたのだ)

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