library

木枯しが吹く校庭、しかし校内は暖房が効いていて暖かい。特に図書館は静かで、各々に自分の世界へ入り込めるような雰囲気もあってお気に入りだ。
読書以外にもテスト勉強をするのにはもってこいの場所である。テスト週間である今回だって、誰にも邪魔をされずにテスト勉強をするはずだった。
はずだったのに。

「(あ、巻島君。)」

隣に参考書やノートを広げて座った派手な長髪頭は嫌でも目に入った。巻島君とはクラスメートだが、特別に仲が良いと言うわけでもなく挨拶を交わす程度。しかし付け加えるなら彼は私の想い人である。
こんな風に隣に座って勉強できるなんて、神様からテスト勉強を頑張っている私へのご褒美だろうか?と思ったが、その考えは甘かった。
巻島のシャーペンをはしらせる長くて綺麗な指や、時折鬱陶しそうにかきあげられる長い髪にどうしても目線が奪われてしまうのだ。

「(やばい、全然集中できない…。)」

参考書の公式や解答例を見ても全く頭に入ってこない。いよいよまずいな、と思っても席を替えようとは思えなかった。

「…名字さん、」
「は、はい!」
「大丈夫?」
「え?」
「全然進んでないっショ。」
「えっあ、」

うわ恥ずかしい、と焦る私をよそにひょいとノートを覗きこまれた。

「ここがわかんないショ?」
「う、うん…。」
「まずこの公式を覚えて…」

あなたが気になって集中できませんでした、とも言えず問題を解き進めていく。

「…で、この答えになるワケ。分かった?」
「なるほど。ありがとう!巻島君、すごく教え方上手いね。」
「誉めても何も出ないっショ。」

意外にも教え方が上手いなと思ったのは本当の事だ。
結局教えてもらったのはその一問だけだったが、私達は下校時刻になるまでテスト勉強を続けた。



「今日は本当にありがとうね。」
「どういたしまして。名字さんはいつも図書室で勉強してるっショ?」
「うんそうだね、集中できるし。巻島君は珍しいね?」
「あぁ、今日は何となく…な。」
「そうなんだ。」
「あのさ、」
「うん?」
「じゃぁ明日も図書室いるっショ?」
「その予定だよ。」
「それじゃぁ明日も図書室行くわ。」
「え、それじゃぁってどう言う…」
「隣の席、空けとくっショ。」
そう言ってヒラヒラと手を振りながら巻島君は帰って行った。案の定、夜も勉強に集中できなかった。

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