ゆきばをなくしたキモチ

しまいこんだキモチのつづき

※東堂視点


初めて名前と関係を持った時、俺は戸惑いながらも、ひどく抱いた事を覚えている。

「私も相手にしてよ。」

名前を性的関係を持つ対象で見たことはなく、そのような願望を持っていたのは正直意外だった。
今までファンの女子に言い寄られ肌を重ねた事は少なからずある。向こうは俺と身体を一つにする事が目的であり、俺も健全な男なのだからその行為を受け入れた。これでギブアンドテイクは成立する。
しかし名前はどうだろうか。性欲は満たされても、何か黒くモヤモヤしたものが胸のあたりに残ったのだ。

そして俺は自分の気持ちを理解した。
それからその気持ちに気付くのが遅かった事に後悔した。

幾度か名前を抱いた。しかし、後悔や後ろめたさ故に名前の顔を見ながら抱く事はできなかった。むしろそんな権利は俺にはないのだ。それでも名前に触れたい。俺は最低だ。

「名前…」

その為、顔を見合わせてキスをする事もなかった。どうして良いのかわからなかった。だから背中にキスを落としたりするしかできなかった。

「ん、東堂」

最近の名前は背中を攻めると敏感に反応するようになった。煽状的なその姿に、俺は本能のまま煽り続けた。

「こうやって噛まれるのが好きなのだろう?」
「ち、がう」
「嘘つきな口だな。」
「あ!ちがう、もん…!」

嘘つきはどっちだ。本当に言うことはあるだろうに、何故こんな言葉しか出ないのか。本能に支配された浅ましい自分に嫌気がさす。
腹が立って、また乱暴に抱く。
堂々巡りだ。

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