so cool
※東堂視点
カッコイイ女、これが名字に対するイメージだ。
初めて話した時「東堂、カチューシャはないでしょ。」と小ばかにされた事をよく覚えている。
彼女は正直者で少し男らしい。
サバサバしているのもあるだろう、女子から慕われている印象だった。
また俺が部活や巻ちゃんの話をした時も「巻ちゃんって人がそんなに大好きなんだねぇ。」とからかわれたが、「でも楽しそうに自転車の話をする東堂、好きだよ。」とこちらが恥ずかしくなってしまうような事も平気で言うのだった。
しかしこの彼女とのやり取りが俺にとっては心地好かった。
また名字との話は共感できるものも多かった。
それは、部活は違えど彼女自身が努力をし、挫折をし、勝負をし、色々な経験をしてきたからだと思う。
ファンとは少し違う立ち位置で接していた名字。
付き合ってはいないけど友達以上の曖昧な関係。
彼女を知らず知らず目で追っていた事に気づいたのはいつだったか。
もっと近づきたいと思いながらも、今の関係を壊したくないと矛盾した願いを持って悩んだのはその後だったか。
そしてそのモヤモヤした気持ちを破って、気持ちを伝えようと決心したのは今だった。
*
「名字、聞いてほしい。」
「なに?」
あらためて向き合うと柄にもなく心臓が飛び出しそうになった。
「俺は…名字が好きだ。」
「えっ…。」
「いきなりで驚いただろうが、好きだ。曖昧な関係も楽しいし心地好い。しかし、俺はもっと名字と深く関わりたいのだよ。」
「東堂…。」
「もう一度言う。名字が好きだ。」
はっきりと伝えると、名字に胸倉を掴まれ、引き寄せられ、キスをされた。
「私も、東堂が好き。」
正直でカッコイイ、名前らしい返事の仕方だと思った。
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