kiss me2
新開君は部活が忙しい。平日はもちろんのこと、土日も練習があってなかなか2人きりでいる時間は少ない。今日は部活がオフだったから私の提案で下校時間まで図書館で勉強して、寮の近くのベンチで座って話しているところだ。たまにだけど、こうしてゆっくり過ごせるのが嬉しい。
「いつも俺のペースに合わせちまってごめんな。」
会話が少し途切れた時、新開君がこう呟いた。
「ううん。新開君こそ折角のオフの日なのに私のしたい事に合わせて会ってくれるじゃん。たまには早めに帰ってゆっくりしなきゃだめだよ?」
「俺は名前と会って話したりするのが癒しになるんだよ。」
「そうなの?」
「そうなの。」
そう返されちょっと困ったようにしていたら「いつもありがとう。」と言われて唇に軽くキスをされた。いつも、こうやって優しいキスをしてくれる。
「新開君は優しいなぁ。」
「何が?」
「性格とかキスとか。」
「そうかな?名前の方が優しいよ。ワガママ言わないで部活だって応援してくれるし、体気遣ってくれるし。」
「まぁ困ることは言わないけど…。」
「ね、たまにはワガママ言ってみてよ。」
「え?何それ。」
「俺にしてほしい事とか。」
「難しいなぁ。」
うーん、と考えるがなかなか見つからない。それにしてもワガママ言ってみてなんて、本当に新開君は変わってる。
「あ、ちょっと難しいけどさ。」
「なになに?」
「優しいばっかじゃ嫌だなぁ〜。」
なんちゃってね、と付け足したけど新開君は「いいの?」なんて聞き返してきた。
「じゃ、今日は遠慮しないから。」
そうしてまた顔が近づいてキスされた。でもいつもの優しいキスとは違って少し乱暴だった。ちょっと戸惑っていると舌が口内に入ってきて抜き差しされる。
「ん、ふぅ…。」
慣れないディープキスに呼吸が乱れた。舌を抜かれ、目を開けると新開君が少し笑ってるように見える。ちょっと恥ずかしいかも…。
「名前、少し口開けて。」
「ふぇ?」
「そのまま舌だして。」
「?」
そのまま新開君の顔が近づいてきたので思わず目を閉じた。
「ちゃんと目開けろって。」
おそるおそる目を開けるとそのまま見える状態で舌を絡ませてきた。すごく楽しそうな目をした新開君が見える。いつもの優しい顔とは違った。
舌先をあわせた後少し強めに私の舌が吸われた。びっくりしてまた目を閉じてしまったけど、お構いなしに新開君は続けた。
唾液のせいで濡れたような音が耳につく。普段慣れていないからなのか、それすらもドキドキして恥ずかしくなってしまった。
「今日はこのくらいにしといてやろうかな。」
酸欠になるんじゃないかってくらい唇を重ねた後新開君はこう言った。今日はちょっと上から目線だ。
それでも、私の頭に回された手は優しく髪を撫でていてくれた。
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