その言葉に偽りなし

私の好きな人は同じ部活の後輩だ。専ら相談相手は同じクラスで同じ部活の新開である。

「泉田君ってなんであんなに素敵なムキムキ君なんだろう。」
「名字ってさ、泉田の筋肉が好きなんじゃね?」
「違うよ!…いや違わないか。」
「どっちだよ。」
「筋肉も好きだけど性格も好きだよ。優しいし、努力家だし、健気だし。この前も仕事手伝ってくれたんだよ!自分は選手なのにさ。」
「まぁ良いやつだよな、あいつは。」
「でもさ…その優しいのって、私が先輩だからじゃん?と言うかみんなに対して紳士的と言うか、良いやつと言うか…。」
「あぁ確かに。」
「私の事あまり眼中にない気がするんだよね、部活以外はあまり接点ないわけで。かと言って部活中に泉田君を贔屓するのはマネージャーとしてしたくないんだ。」
「マネージャーの鏡だな名字は。」
「いや当たり前でしょ。デートとかいきなり誘っても引かれちゃうだろうしなぁ…。」
「まぁ少しずつ距離を縮めてくしかないんじゃない?」
「だよね。部活の時間が待ち遠しいよ。」






「お疲れ様です!」
「お疲れ様―。」

部活が終わってあとは帰るだけだ。今日は少ししか喋れなかったな。

「おい、名字。すまないがこのメモに書かれた機材を部室まで持ってきてほしいんだが。」
「わかった。どこにあるの?」
「2階の準備室だ。…しかし量が多いな。大丈夫か?」
「あ、ボク手伝いますよ。」
「そうか。それなら2人で運んでもらおう。」
「え、泉田君いいの?」
「大丈夫ですよ。それに重たい機材もありますし1人じゃ無理です。」

練習で疲れているはずなのになんてできた子なんだ…!!
そうして私たちは2人で準備室へ向かった。






「じゃぁ名字先輩はこれをお願いします。あとはボクが持ちますから。」
「ありがとう。そんなに持って大丈夫?」
「鍛えてるから余裕ですよ!それより先輩も重たかったら分けて、後で一緒に運べば良いですからね。」
「私だって3年間自転車部のマネージャーやってるからこれくらい大丈夫だよ。じゃぁささっと運んじゃおう。」

でも持ち上げると結構重いかも…。フラフラしながら運び始めた。

「あ!名字先輩、そこ段差…!」
「え、わっ!」

かくっと足が持ってかれたかと思うと泉田君が支えてくれた。
アンディとフランクが至近距離にいる。

「ごめん、あ、ありがとう…。」
「いえ、すみません!言うのが遅かったみたいで。大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。本当にありがとう。…間近で見ると本当に筋肉すごいね。」
「え!?」
「あ、いやなんでもないよ!!」
「…新開さんから聞いたんですけど。」
「ん?」
「名字先輩がボクの筋肉が好きだって…。」
「えぇ!?」

何話してんだあのバカ!!しかも筋肉が好きって!!

「そうなんですか?」
「え、いや!好きだけど好きっていうかね!?」
「筋肉が好きなんですか?」
「いや泉田君が好きなんだけど!?」

あっ、と思った時には遅かった。顔を真っ赤にした泉田君が黙り込んでしまった。

「…。」
「…ご、ごめん…!今の忘れて!!」

あぁ終わった私の恋、こんな勢いで言ってしまって。助けてもらったのに困らせて申し訳ない。そして部活で気まずくなるのは避けたい!

「…ボクは、」
「ん?」
「いえ、ボクも名字先輩が好きです。」
「え!?」
「だから恥ずかしいけど嬉しいです。」
「本当…?」
「本当です!新開さんにさっきの話を聞いたときも嬉しかったんです。」

泉田君が照れながらも一生懸命話をしてくれる。

「だからさっきの言葉、忘れてなんて言わないで下さい。」

そう言って力いっぱい抱きしめられた。本日2度目のアンディ、フランクとご対面だ。

「それに、」
「それに?」
「筋肉が好きならいつでも見せてあげますよ。」
「マジで!?」
「でも先輩のも見せてくださいね。」

にこっと爽やかスマイルを投げかけられた。
こんな口説かれ方は初めてだよ。


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