アドバイス

ヤバイヤバイヤバイ寝坊した!!朝練の時間はとっくに過ぎ、始業時間が迫っている。カバンを乗せたママチャリを必死で走らせた。
学校の近くの上り坂に差し掛かり、スピードが落ちる。大抵の人が自転車から降りて引いて上る坂だ。ゆえに「遅刻坂」と呼ばれている。
しかし今回はそうも言ってはいられない。部活で鍛え上げた筋肉をここで使わずいつ使うのだ。腰を上げて必死にペダルを踏み込んだ。

「あれ、名前じゃん。」
「げ、荒北…!」

声のする方を向くと荒北も坂道を上っていた。荒北は嫌いではないけど口の悪いイメージしかない。絶対からかわれる。
こいつは朝練の帰りなのだろうか、時間ギリギリの登校なのだろうか。どちらにせよ息切れしまくりでまったく余裕のない私とは対照的に、余裕綽々で焦っている様子は微塵もなかった。

「時間ギリギリなんて珍しいなァ。寝坊か?」
「うっさい!それより、荒北も、遅刻なんじゃないの?」
「はっ、俺はおめーと違って間に合うように来てンだヨ。そんなスピードじゃ遅刻確定じゃね?」
「だって、これ以上、スピード上がんない、し。」
「土踏まずじゃなくてつま先で体重掛けるようにペダルを踏んでみろ、さっきより進むはずだからよォ。」

自転車競技部員の言うことは正しかった。私のママチャリがぐい、ぐい、と進むではないか!

「おぉ、さっきより、楽かも…!」
「だろ?」

あと少しがんばれよと付け足して荒北がニィと笑って見せた。良いやつじゃん!

「あ、最後にもう一つ言わせろ。」
「え?」
「朝からパンツチラチラ見せてんじゃねェよ、痴女かてめーは。じゃ、先行くわ。」

やっぱり口が悪いやなやつだ。


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