名前が行方不明になって1週間が経った。
相変わらず、何の手がかりの掴めないまま、時間だけが過ぎていく。
警察の調べによれば、第三者が家の中に入った形跡はないらしい。
はっきりとは口にしていないようだが、今回の件に関しては、警察はこれまでの事件とは無関係ではないかとの見方を示しているようだ。

ただの家出ではないのかと、暗に警察はそう言いたいのだろう。




「……そんな、はず。あらへん。名前は誰にも言わずに家出するような奴やない」






名前は事件に巻き込まれたんや。
警察がアテにならんのやったら、俺が絶対名前を見つけ出したる。
アイツが見つかるまで、俺は絶対諦めたりなんかせえへん。















気丈に振舞っているが、謙也は明らかに憔悴した顔をしていた。
あの事件が起きてから、ほとんど夜も寝ないで名前の手がかりを探しているらしい。

俺自身、名前がいなくなったあの日のことを思い出すと悔しくて仕方がない。
事件を未然に防げなかったことも勿論そうだが、あの日あんなことがあって、名前は家に1人でいるのが不安でしょうがなかったはずだ。

……それなのに、何で一緒に側におってやれんかったんやろ。

もしも、あの時、と考えを巡らせるほど、自分の無力感に悩まされた。
謙也も同じなのだろう。いや、俺以上に責任と悔しさを感じているのかもしれない。

精神も相当まいっているようだし、食事も睡眠もろくにとっていない身体で、他のメンバーへの迷惑を考え、部活だけは休まず参加している。
あのまま放っておけば、謙也がどうなるかは火を見るより明らかだった。





「……俺は、どうしたらええんやろか」

















例の事件から1週間。
事件のことを白石から連絡を受けて知り、それから学校へは行っていない。
行く暇が無かったと言うほうが正しいのかもしれない。

俺はある場所を目指して、九州に来ていた。






「……ここに、名前の手がかりがあるはずたい」






あと3時間ほどバスに揺られれば、目的の村に辿り着く。
そこは、神隠し伝説で有名な小さな村だった。
祖父母はここの出身であり、今もここに住んでいる。最後に会ったのは思い出せないくらい昔だが、今も健在している祖父母に連絡をとったのが2日前。

小さい頃、祖父母から聞いた話は、今回の事件にひどく似ていた。




それは、村の作物が不作だった年の満月の夜に村の娘が1人ずつ神隠しに遭うというもの。


もう何十年も前の、それも子供の頃に聞いた話である。今回の事件とも何ら関係のない可能性の方が高い上に、子供に聞かせる冗談だったと言われればそれまでだった。
しかし、それでも諦めることができなかった。

この村には、きっと何か手がかりがある。
根拠は一切ないが、確信めいた不思議な予感がしていた。




「……この目で確かめるまでわからんけんね」






名前を見つけるまで、絶対に諦めん。
そんな、強い決意とともに、千歳は単身九州へとやってきた。

神隠しの被害者であり、唯一の生還者である祖父母に会うために。








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事件後のそれぞれ。

白石は、ある意味とても冷静に状況をみている。
警察にもわからないものが、自分らにわかるはずないという諦めのような思いがあるのだと思います。でも、どうにかしたい。
だからこそ、謙也を心配しながらも止めることができないのです。



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