「……名前が、いなくなった?」






咄嗟に口からでた言葉は、そんなものだった。
口の中が渇いて、少し掠れていた。
携帯ごしに伝わる従兄弟のやや緊張した声に、先ほどの言葉が冗談ではないことを悟る。




「……名前が、一昨日の夜から行方不明になった。俺と最後に電話したきり、もう2日も行方がわからん。警察にも捜索願いは出しとるけど、まったくなんの手がかりも掴めへんらしいねん」





先ほどの謙也の言葉を頭の中で反芻する。
言葉を詰まらせたのは一瞬で、不思議とすぐに冷静になることができた。
開けていた部屋の窓から、生温い風が部屋のカーテンを軽く揺らした。
それを横で見つめながら、言葉を続ける謙也の言葉に耳を傾ける。





「お前にも、知らせた方がええと思って連絡してん」

「……そうか。おおきに」






そう軽く相槌を打ちながらも、頭では別のことを考えていた。大阪に向かう新幹線に乗る名前を見送ったときの、最後に名前が見せた笑顔を思い出していた。







「ほな、落ち着いたら連絡してな」

「うん。……しばらく、侑士とは会えなくなっちゃうね」

「なんや急にしおらしくなって。そんなに俺と会えなくなるんが寂しいん?」




冗談のつもりでいった言葉に、名前は寂しいよ、と素直に頷いた。




「……別に、どうせまたすぐ会えるやろ」

「そう……だよね。夏休み、会いにいくね!侑士も寂しくなったらいつでも会いに来ていいよ!」

「アホ。……ほら、もう時間やろ。はよ乗らな。発車するで」

「あ、うん。じゃ、もう行くね?元気でね」

「名前もな。向こうでも元気でな」

「……うん」

「なに泣きそうな顔してん。夏休み、来るんやろ?そんな顔で大阪行ったら謙也に笑われんで」




いよいよホームに発車を予告するベルが鳴り響き、名前の背中を押してやる。
名残惜しそうにドアのところでこちらを振り返る名前の瞳に涙がじわ、と浮かぶ。

苦笑しながら、頭をポンと撫でれば、赤くなった目で名前はふにゃりと笑った。
昔からずっと変わらない名前の笑い方。

次にこの顔が見られるのはいつになるのかと、発車する新幹線を見送りながら柄にもないことを考えている自分に呆れた。








まさかその数ヶ月後、同じホームで大阪行の新幹線に乗る自分の姿など、この時は想像もしていなかった。



















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もしたりUCくんが出張る……





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