「そない難しい顔してどうしたん?」





自分の机に向かってあー、とかうー、とか唸り声をあげるなまえをみかねて、白石は苦笑しながら声をかけた。



「あぁ、蔵。おはよう。」

「おはよう。どうしたん、葬式みたいな顔してんで。」

「……光くんにもっと好きになってもらうにはどうしたらいいんだろうって考えてて。」




なんやそら、と誰がどうみてもなまえを好きで好きで仕方が無い愛想のない後輩の顔を思い出して白石は呆れた。しかしそれを表情には出さずに席につき、話を聞く体勢に入る。



「何かあったん?」

「昨日、光くんが女の子に告白されてるの見ちゃって……。光くん、モテるからもっとわたしも頑張らなきゃなぁって思って。」



財前が聞いたら喜ぶやろなぁ。と思いながら、至って真剣に悩んでいる様子のなまえをみる。



「十分努力してるやんか。なまえ、財前と付き合い出してから前より可愛くなったと思うで?」

「えっほんと!?」

「おん、髪とか毎日ちゃんとしとるし、爪もいつも綺麗にしてるやん。」




普通の女子なら「惚れてまうやろー!」なことをさらっと言ってしまえるのがこの白石という男である。
普通の女子ならば卒倒しかねないが、財前のことで頭がいっぱいのなまえは嬉しそうな顔をして照れたようにはにかんだ。



「へへ、ありがとう。まだまだちっちゃい努力なんだけどね!」

「けどそういうの男からしたらめっちゃ嬉しいわ。財前も気付いてると思うで、なまえが頑張ってんの。」

「だといいな〜。……実はね、こっそり最近料理も頑張ってるんだ!上手になったら光くんに食べて欲しいなぁって。」

「おー、そんなん絶対うれしいやん!幸せもんやなぁ財前は。ほんまうらやましいわ〜」





少し頬を赤らめるなまえを微笑ましく思いながら、白石は視線を感じて教室の入り口に目をやった。
そこに面白いものを見つけて、思わず笑いそうになってしまうのをなんとか堪える。

……男の嫉妬は格好悪いで。




「光くん喜んでくれるかな。あ、そうだ!じゃあ今度試作品作ってくるから味見してもらってもいい?」

「んーそやなぁ。協力してやりたいねんけど、後ろの怖い顔した奴に復讐されそうやから遠慮しとくわ。」

「……賢明な判断ですね。」


「えっ、ええええ!?ひ、光くん……いつから……!」




慌てるなまえに、財前は涼しい顔で挨拶していた。先ほどまで白石に険しい視線を向けていたことなど、おくびにも出さないのはさすがである。
もっとも、白石にとっては財前のその様子が面白くて仕方ないのだが。




「……ていうか、なまえさん、白石部長と席隣なんですか。」

「あ、うん。こないだね、席替えしたの。」

「ええやろ〜、なまえの寝顔見放題やで?」

「えっ!わたし寝てる時たまに半目になるんだよね……。どうしよう。」




1人微妙に意図を掴めていないなまえだったが、白石が財前をからかって遊んでいるのは明らかだった。
ほぼ無表情の財前に、まわりでひそかに会話を盗み聞きしていたクラスメイト達だけが肝を冷やす。





「……なまえさんの寝顔くらい、いつも見てるんで別にええっすわ。」





ニヤリ、と流し目で口の端をあげた財前に、赤面したのはなまえだけではなかった。
クラスの女子、そしてなぜか男子までも、耳を赤くして微妙に居心地の悪い思いをした。





「ハハッ、言うようになったやん!」

「ひ、光くん!」

「なまえさん顔真っ赤。」











白石が声を出して笑う中、クラス一同「リア充爆発しろ!」と心の中で昨夜の金曜ロードショーでやっていた国民的人気アニメの崩壊の呪文を唱えるのであった。





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2012.03.03

バルス!

御礼小説大変遅れてしまい申し訳ないです( ; ; )5月のアンケートの御礼小説がこんな遅れるとかバルス!!
財前でほのぼの、のはずが白石さんの出張り具合。笑
しかもギャグ要素薄くて申し訳ないです……orz

本当ならば直接お知らせしたいのですが、データが消えてしまった関係でリクエストをくださった方のお名前がわからなくなってしまいました。届いていると信じて!
リクエスト、ありがとうございました!
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