その日、小太郎は長期の任務を終え主に事の次第を報告しに向かう途中であった。




「……?」





人気のないはずの森の中で、突然現れた気配を不審に重い足を止める。
気配をまったく消そうともしない様子からして忍等ではないと伺えるが、それにしても妙だ。
ここは既に北条の領地であるが故、自分にはその正体を確認し、主に報告する義務がある。

気配の正体に悟られないよう慎重に、小太郎は気配を消しながら近づくことにした。
















「っ…な、なんで……?!」







頬を撫ぜる風によって、微睡む瞼を持ち上げたなまえが目にしたのは想像を絶する光景であった。

自分の記憶が確かならば、眠りにつく前は間違いなく自分のベッドの中にいたはず。
……悪い夢でも見ているんだろうか。

どうして、わたしは木の枝に制服が引っかかった状態でぶら下がっているのか。
大体制服を着ているというのも自分の記憶と一致しない。
あまり自由の聞かない首を無理やり動かして眼下を除けば、落ちたら掠り傷ではすまなそうな高さであることがわかった。





「た、助けて……!」






訳がわからない。
目が覚めたら木に引っ掛かっていたなんてこと、あるはずがないのに自分の今の状況は何なのか。

それにさっきからヒリヒリと身体のあちこちが痛む。どこか怪我をしているのかもしれない。
しかしそれを確かめようにも、なまえにはどうすることもできなかった。
いっそ、一か八か、落ちてしまえば楽になって、この妙な夢からも醒めるだろうか。
そんな考えが頭を過ぎったとき、ミシミシ……という何かが軋むような嫌な音が聞こえた。

まさか、




嫌な予感がして、さっと血の気が引く。この高さからなら、打ち所が悪ければ死ぬかもしれない。いや、逆にこの訳のわからない状況くら脱することができるかも。


頭のすぐ上からミシッという音が一際大きく鳴った。もうあまり長くはもたないだろう。

くるであろう衝撃に備えて、なまえはぎゅっと強く瞼を閉じる。
さっきはこの状況から脱することができるかもと考えたが、やはり落ちるのは怖い。
恐怖で震えるなまえを嘲笑うかのように、あっけなくその瞬間は訪れた。







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2011.11.28.




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