何もかも、終わりだと思った。


細く天に昇っていく煙を横目に、写真立ての中の両親を眺める。
ほんの数日前まで平々凡々な暮らしをしていたわたしの人生は、両親の不慮の事故により一転した。

飲酒運転のトラックが両親の乗った乗用車に突っ込み、即死、だったらしい。

隣の部屋では、数年ぶりに会う親戚の叔母や叔父がなにやら言い争いをしている。
おそらく、わたしを誰が引き取るかという話でもめているんだろう。





「うちは康太が来年大学進学をひかえているし、とてもじゃないけど……余裕ないわ」

「それを言うなら!うちだって同じよ!」

「……ちょっと!2人とも声が大きいわ。なまえちゃんに聞こえるじゃない」




残念ながら、ぜーんぶ聞こえてます。

こんな時、自分に兄弟がいたら心強いのに。
ありもしない想像をして、心身ともに疲れきった身体を動かそうと、床に手をつき重い腰を持ち上げる。
最後にもう一度、写真の中の両親を見つめ、少しだけ2人に微笑んでみせた。


大丈夫、わたしはちゃんとやっていけるよ。















慣れない1人暮らしを始めて、早5日。
あの後、親戚達に両親の残してくれた財産で1人暮らしをすることを申し出れば、建前上の心配を装いながらも、皆一様にホッとした表情をしていた。
それでも、1人暮らしの物件を探してくれたり、何かと面倒な手続きを手伝ってくれた親戚には感謝している。
引っ越しの荷物がまだまだ片付かない部屋で、とりあえずの寝場所を確保し、わたしはこれからの生活を頭の中でイメージした。
憧れていた1人暮らしだったけれど、こんなかたちでそれが叶うとは思ってなかった。





なんだか……疲れた、なぁ。





休まる暇がなかったこの数日間を振り返りながら、自然と重たくなる目を閉じる。
次に目を覚ましたら、何もかも嘘だったらいいのに。
そう願いながらも、音のしない空間が嫌でもわたしに、家族がいなくなった現実を思い知らせようとしている気がした。


誰もいない部屋はひどく静かで、孤独を浮き彫りにする。






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しれっとbsr連載。
誰が出てくるかはお楽しみ。





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