『ーー次のニュースです。先月大阪府○○で、○○高校に通う女子生徒が行方不明になった事件で、警察は写真の公開をーー…』








「ちょっと、ママ!これ、うちのすぐ近くの高校だったんだって!」

「あらやだ本当…。あんたも帰り気をつけなさいよ?今日も部活遅くなるなら謙也くんと一緒に帰ってきなさいね」

「うぇぇ…やだよそんなの。それに謙也なんかいたって何の役にも立たないし!」




ごちそうさま!

残っていたトーストを口に詰め込んで、まだ何か言いたげなママを振り切り玄関へと急ぐ。
やばい、朝練遅刻かも!
白石に怒られる!




「あ、そうだ。今日ママ達仕事で遅くなるから、戸締りはしっかりするのよ!?」

「んー」




奥から何かママの声がしたけど、どうせ大したことじゃないからと生返事で返す。
…走ればギリ間に合うかな。こんな時に限って学校にチャリ置いてきちゃったしなぁ。





「いってきまーす!」






しかしそんな心配は無用だった。
ガチャン、と玄関のドアを閉めて走り出そうとしたわたしの目に飛び込んできた幼馴染。
いつもは憎たらしいその顔も今日だけはとびきり輝いてみえる。





「謙也?!えっもしかして乗せてってくれんの?」

「お袋が最近物騒やから、しばらく送り迎えしたれってうるさいねん…しゃあないから乗せてったるわ」

「うわ〜神!ありがと〜!」

「ようつかまっとけ!お前のせいで俺まで遅刻しそうや」



ぶつぶつ文句を言う謙也の後ろにまたがって、しっかりとその腰に掴まる。
スピード馬鹿なこいつは、2ケツとはいえ、どえらいスピードで進むのだ。
一歩間違えばチャリから振り落とされかねないので、安全面は自分で気をつけるしかない。




「ほな行くでー!」

「おーっ」





謙也とは、親同士が大学時代の同級生なこともあって、生まれる前からの付き合いだったりする。
昔は謙也の従兄弟の侑士と3人で陽がくれるまで遊んだものだ。




「なーんか久しぶりだよね!学校一緒に行くのとか」

「あーせやなぁ。俺未だになまえが大阪におるのも変な感じやわ」

「そうー?」

「すっかり東京にかぶれよって!何やねんその標準語!都会人気取りか!」

「別に気取ってませんー!」





中学での3年間、わたしは家の都合で東京にいて、高校に上がるこの春3年ぶりに大阪に戻ってきた。

侑士もわたしと同じタイミングで東京の同じ中学校へ行くことが決まったため、幼馴染の中では謙也だけが大阪に残る形となった。

高校は大阪に戻ると決めていたため、今度は東京に残る侑士となかなか会えなくなったけど、かわりにこのアホとまた幼馴染ライフが送れるのが実は嬉しかったりする。




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