「あ、もしもし?…うん久しぶり。元気だよ。うん、まあ…。や、実はさ。ちょっとお願いがあるんだけど…」












***



…つばさちゃんのクラスってどこだっけ。



謙也くんと同じかな。
昼休みの開始とともに携帯とお弁当を片手に教室を出たわたしは、つばさちゃんを探しに隣の教室を覗いてみる。
…誰もいない。
どうやら前の時間は体育だったらしく、教室にはまだ誰も戻ってきていないみたいだった。



…んー。どうしよっかなー。

用事がてらお昼を一緒に食べようと思ってたんだけど、待っていたら食べるのが遅くなってしまうかもしれない。
わたし食べるの遅いしなぁ。
教室、戻っちゃおうか…。

うーん…。隣のクラスの前の廊下で考えながら、ぎゅるるるると鳴るお腹をおさえる。
まあ、次会った時とかでいっか。また、放課後にでも。
そう、踵を返そうとした時だった。




「アンタ何してんの?そこ邪魔なんだけど」

「………あ。いた」






ご本人様登場。
体育だったからか、いつもおろしている髪の毛は、後ろで小さく結ばれていて前髪はピンで留められていた。
服装も、いつもの着崩した男子の制服ではなく(最近知ったけど、たまに女子の制服を着ている時がある)Tシャツにジャージという姿なので、正直…一瞬誰だかわからなかった。

ていうか、今日は普通に綺麗な顔の男の子っていう感じ。



「わー…」

「…なによ、人の顔あんまりジロジロ見ないでくれる?不愉快だわ」

「なんかつばさちゃん今日は男の子みたいだね」

「ハァ?アタシ男だもの。当たり前じゃない」

「…え、そういう認識?」

「アンタねぇ…。アタシのこと何だと思ってんの?」

「…おかま?」

「……。」



え、違うの?
なんかわからないけど、今物凄い呆れた顔をされた。
はぁぁぁ…とわざとらしいため息付きで。




「…おかまにも色々あんのよ。別にいつも女の格好してる訳じゃないし、アタシの美しさが最も引き立つ格好を選んでるだけ。わかる?別に男扱いされんのが嫌とかじゃないわ?」

「そうなの?!え、でも男の子が好きなんじゃないの?」

「あー、それもよく誤解されるのよねぇ。まぁ確かに男の身体は好きよ?キュッと引き締まったお尻とか綺麗だし。でも女だって好きになるわよ?しいて言えばバイね」

「へえぇ、そうなんだ」



つまり恋愛に性別とかは関係なくて、美しいか否かってことかな。ふむ。

ただアタシより美しい女ってあんまりいないのよねぇ〜。

チラ。
眉間にシワを寄せて顎に手をわざもらしく置きながら、つばさちゃんがあからさまにわたしの方を見ながらいった。
…うん、これはきっと嫌味なのかな。
…もはや完敗すぎてまったく何も思わない。




「ていうか、アタシさっさと着替えてお昼食べたいんだけど」

「あ、忘れてた。今日お昼一緒に食べないかと思って誘いにきたんだ」

「…え〜嫌よ。なんでアンタなんかと」

「あー。実は…こないだの"アトベ様"のことで…」

「わかったすぐ行くわ?」

「……。」












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