急がないと。
図書館の貸し出しって、何時までだっけ。
明日までに課題の本を借りなきゃいけないのに。
部活見学をして色々まわっていたら、すっかり遅くなってしまった。
しかも結局入りたい部活も見つからなかったし。
…まぁ、無難に文化系かな。

老朽化のためか、少しだけ重たいドアをスライドさせて図書室の中に入る。



……あ。


「ヒカルン!もう誰も来ないし帰りましょーよー」
「…その不愉快な呼び方やめてくれますか」
「えー?ヒカルン可愛いじゃない」
「少しも可愛さ求めてないんで。…誰か来てますからそこ退けて下さい」
「可愛いくない!けどかわいーい!」
「…ウザ」
「……」



つばさちゃんに物怖じせずに淡々と話す黒髪ピアスの男の子は初めてみる顔だった。
図書委員の人らしく、一応受付に腰掛けている。あんまり似合っていないけど。

つばさちゃんが構うだけあって、やっぱりというか、イケメンさんだ。
気怠げな雰囲気がちょっと怖いけど、悪い人ではなさそう。
つばさちゃんと仲良しみたいだし。


「つばさちゃん」
「ちょっと!またあんた?もしかしてあんたあたしのストーカーなの?」
「や、たまたま本を…。えーと、彼は、」
「…あ!やだ!駄目よ!ヒカルンは駄目!駄目駄目絶対駄目!」
「や、(違う…けどまあいいか)」
「先輩やかましいすわ」



刺し出せずにいた本をすっと取られて「名前は?」と目線も合わずに問われた。
「2-4のみょうじです。」そう応えてから、貸し出しカードなんて作っただろうかと考える。
クラスの図書委員の人が勝手に作ってくれているんだろうか。




「…ないっすけど。借りんの初めてですか?カード作りはりました?」
「あ、それってやっぱり自分で作るんですか」
「そう、これに学年と組と名前、あとここに本の名前と日付と…」
「やーん!ヒカルンの指細くてきれーい!」
「……」
「……(ほんとだ)」



つばさちゃんにつられて、彼の手元をみれば、細くて長い、それでいて少し骨っぽい綺麗な手をしていた。
わたしがカードに記入する間、ヒカルンと呼ばれる黒髪くんにつばさちゃんは恋人つなぎを迫っていたけれど、黒髪くんが全身全霊で拒否っていた。



「貸し出し期間は2週間なんで」

「あ、はい。どうも。つばさちゃんもまたね」
「しっしっ!さっさと出て行きなさい!」
「…もうここ閉めますから。先輩こそ帰って下さい」
「えー?もう?」



「さっきまで早く帰ろう言うてたのは誰ですか。…あと俺、今日は寄るとこあるんでお先失礼します」



なんだかんだ3人同時に図書室を出て、鍵を閉めたあとに彼はそう告げた。
さっさとその場を去っていく彼をなんとなくみていたら、つばさちゃんに睨まれる。

…美人はやっぱ迫力あるなぁ。




「あんた!木曜日の放課後はここに来ちゃだめ!わかった?」
「へ、なんで」
「部活もないし、ヒカルンが当番だからよ!あんた次本借りる時は火曜のゴリラ田中の日にしなさいよ!」



ゴリラ田中ってだれだ。
それはそれですごく気になったけど、わたしはあえてスルーして違う疑問を口にした。




「つばさちゃんて、何か部活入ってるの?」



「はー?あんたってば本当になにも知らないのね?!」
「すみません」
「…別にいいけど。あたしもヒカルも、ちなみに蔵も謙也も一緒の部活なんだから!ま、あたしはマネージャーだけど」
「え。そうなんだ、何部?」
「男子硬式テニス部よ。あんたもうちの学校のテニス部が全国区なことくらいは覚えておきなさいよね!」
「へぇえ…」




全国区って、すごいな。
もしかして、白石くんも謙也くんも、みんなすごい人なの?
つばさちゃんは出会った時からスターオーラは感じてたけど…。

わたしが前いた学校もテニスの部の強い学校だったけど、ここもそうだったんだ。




「わたしの前いた学校ね、氷帝学園っていうんだけど、そこもテニス部が結構強いとこなんだよ」




何気なく話題にしてみたら、ビクッとつばさちゃんの肩がはねた。グギギギ、と不自然に顔がこちらに向く。

……え?




「……氷…帝、……ですって?」
「え、もしかして知ってる?」

「…あ、当たり前じゃない!氷帝といえば、…!」






「跡部様がいらっしゃるじゃないー!!」






きゃーっと、祈るようなポーズをとりながら、つばさちゃんが目をキラキラと輝かせながらこっちをみた。

ゾクリ。
……なんかものすごく嫌な予感が。




「…あんた、氷帝のテニス部に知り合いいる?!」
「へ、あ〜まぁ一応」
「じゃあ跡部様をわたしに紹介してっ!」
「えぇっ?」
「跡部様とお近づきになりたいの!ね?お願いー!」
「そのテニス部の下っ端に頼んでさ、なんとかしてもらえない?あたしとなまえの仲じゃないー!」



えぇえぇぇぇ…

もうすごいなこの人!
しかも知り合い下っ端決定してるし。


ていうか、紹介してもらうもなにも…。
わたしのテニス部唯一の知り合いの顔を思い出して苦笑する。

その跡部景吾がわたしの幼なじみであるといったら、つばさちゃんは一体どんな反応をするんだろうか。









まさかの。笑
つばさちゃん自重(^∇^)

にしても財前くんの関西弁むずかしい。
書いててわからなくなります。
関西在住の方おられましたら、どうかおかしいところとかご教授ください(>_<)
わたしの中で彼は京都風なはんなりした感じのイメージ。小春ちゃんも。


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