「……おい、なまえ。何だこれは」
「いやーん、信じられない!本物だわ?!その冷たい視線も素敵ィ!」
「あはは」
「笑ってねぇでどうにかしろ!何なんだこいつは」
「はぁ、本当に綺麗……お肌もツルツルだしもう、完璧だわ……?!」
「……」
ついに景吾と対面を果たしたしたつばさちゃんの喜びっぷりと言ったら凄かった。
景吾を視界に捉えた瞬間にはもう、物凄いスピードで駆け出していた。
なんせ、あの景吾が身動きとれずに捕まっている。……つばさちゃん恐るべし!
ただ残念なのは、会ってすぐにつばさちゃんが男であることに景吾が気付いたこと。
インサイトなんて卑怯だ。
そう言ったら本人には使うまでもねえ、と一蹴されたけど。
ま、つばさちゃんも今日は当然マネージャーモードで対面するまではがっつり働いてたしね。それこそ勇ましく後輩に指示を飛ばしながら。
それでも、普段あまり動じることのない景吾が、つばさちゃんのキャラに目を見開いて絶句していたのは笑えた。
「持つべきものは友達ね!まさか、親友のなまえの幼馴染が跡部様だったなんて〜!」
「はは」
「おい!笑ってねぇで助けろつってんだろが!」
「あらなまえ。跡部様のことはアタシに任せて?久しぶりに会う友達も他にいるでしょう?」
「うん、そうする」
「…テメェ!おい、なまえふざけんな!」
つまり早くどっか行けというつばさちゃんからの無言の圧力を感じて、わたしは笑顔で景吾を売った。
いや、今景吾を助けたら"親友"のわたしが危ないんでね。
というか単に景吾が慌ててるのが面白かったり。
とりあえずつばさちゃんが喜んでくれてよかったな。
この際景吾の助けを求める声は全力で無視だ。
笑いながら徐々に距離をとっていると、先ほど到着した大きなバスから懐かしい面々が降りてくるのがみえた。
「みょうじ!」
「あ、宍戸くん!うわー、久しぶり!」
「お前なぁ…!何も言わねえで引越しやがって!携帯も通じねぇし」
「ごめん、色々あって」
「……まぁ、とにかく元気そうでよかったぜ」
あんま心配かけんなよ、と、頭に手が乗っけられる。あ、この癖変わってない。
何気ないやりとりも、懐かしくて温かい気持ちになる。
同時に、本当に心配をかけてしまっていたんだな、と申し訳なく思った。
新しい連絡先教えるね、と携帯を取り出せば「おう」と、嬉しそうに笑ってくれた。
「あ、ジローと長太郎にも教えていいか?ジローの奴なんて最後までこっちに来るって駄々こねてたからな」
「あ、お願い。わたし、前の携帯データごと捨てちゃったから、みんなの連絡先わかんないんだよね」
「げ、まじか。了解」
「……なんか、ほんとごめんね。ありがとう」
「これからは何かあったら連絡しろよ?俺じゃなくても。せめて跡部にはしてやれ。あいつお前の事すげぇ心配してたからな」
「……うん、わかってる」
というか昨日も超怒られました。
この前久しぶりに景吾に連絡した時にも、だいぶ怒られたし。
……いや、わたしがずっと景吾からの連絡を無視していたせいなんだけどね。
この数ヶ月を思い返すと、自分のことばかりでほんとに余裕が無かったなぁと思う。
……宍戸くんはもしかしたら、景吾から何か聞いているのかもしれない。
景吾には、こっちに来てから1番始めに連絡をもらった時に(どこでどう連絡先を調べたのか未だに謎だ)、ある程度事情は話していた。
あくまで、ある程度だけど。
宍戸くんは優しいから、あえて何も聞かないでいてくれてるのかもしれない。
宍戸くんとは中学時代、ずっとクラスが同じで仲良くなったけど、彼の優しさは出会った頃から変わらない。
「こっちにはもう慣れたか?」
「んー、だいぶね。たこ焼き器はまだ買ってないけど」
「なんだよそれ」
「大阪人はみんな一家に一台たこ焼き器あるんだよ」
「……あーそういえば、忍足ん家にもあったかもしんねぇ」
宍戸くんの口から"忍足"という苗字を聞いて、今更ながらアレ、と思った。
ん?……忍足、って。ちょっと待って?
え、何で今まで何も思わなかったんだろう。
「え、忍足って、まさか……」
「は?お前今更かよ?四天宝寺にいる忍足って、氷帝の忍足と従兄弟だぜ?」
「や、やっぱり?うわ、今気付いた……」
え、世間狭!
氷帝の忍足くんとはあんまり話したことも無かったけど、それにしたって氷帝では有名人だし関西出身なのも知ってたのに……。
自分の鈍感さに驚いた。
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いろんな人が出て来ました。
ヒロインちゃんはマネとかやってたわけではないのですが、跡部繋がりでそれなりにテニス部とは仲良しです。
まああくまで一部ですけどね。
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