「……気にしとんなぁ」
「おん、全力で気にしてんな」
言ってる側からドリンクのボトルをバラバラと落とすその姿は普段からは想像つかないほど滑稽だった。
「イヤァァー!」
部活中はオカマキャラも封印して白石の変わりに後輩に指示することもしばしばだが、今日は指示を出すどころの話ではない。
話しかけられてもボーッとしていて、ワンテンポ遅れて反応してみたり。明らかに上の空だった。
白石と忍足の視線の先で、今も落としたボトルに躓いてすっ転んでいる。
「つばさ〜。今日はもう上がってええで」
「はっ?な、何言ってんのよ!だってまだ…「ええから」
「今の状態でおっても邪魔にしかならん。怪我人出てからじゃ遅いねん。言ってる意味わかるやろ?」
つばさの言葉を遮るように白石がはっきりと告げた。
有無を言わさないその言葉に、つばさも黙ってその場を去る他なかった。
部活中に白石がつばさに対して怒ることなど稀なため、部員達も驚きを隠せないでいる。
「蔵りんがつばさに怒るなんて珍しいわねぇ」
「ホンマやな。せやけど朝からあの調子やからなー。無理もないわ」
「そうねぇ。気になって仕方ないのね、きっと」
「?…つばさは何をそんな気にしとんねん?」
「ふふっ、ユウくんは知らなくていいのよ」
「え〜教えてやぁ!小春はホンマ小悪魔さんやなぁ!」
「ユウくーん!」
「こは「邪魔っすわ」
なんやとゴルァァア!財前ー!
背後で怒り狂う先輩をスルーしながら、財前は考えていた。
…十中八九、なまえ先輩が元気ないんはつばさ先輩が原因やな。
白石とのやり取りを冷静に見ていた財前は部室へ去って行った背中を目で追った。そして自分より先に追いかける人物を見ると部室へ向かっていた足を止める。
ーーーうちの部活はお節介の集まりやな。
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