ーーー正直ほんと迷惑。
昼休みつばさちゃんに言われた言葉がぐるぐると頭の中をまわって離れない。
声に出したら余計に、それはズシンと心に重くのしかかってくるようで。
家に帰る気にもなれず、誰もいない放課後の教室に1人残っていた。
「……迷惑、かぁ」
…やばい。わたし、今思った以上にすごいショック受けてるのかも。
こうして自分を客観視してしまうのは昔からの癖で、今も"ショックを受けている自分"をどこか遠くから眺めているようだった。
……もう、話しかけたら駄目かなぁ。
ーーー最近、つばさと仲ええよね
白石くん、やっぱり勘違いだったよ。
内心、ちょっとは仲良くなれたかなとか自分でも思い始めてたけれど。
少し、自惚れていたみたいだ。
「あ、先輩」
「…財前くん」
あれ?でもここ3年の教室なのに。部活は?
あ、でもジャージ着てる。
「何でって顔してはりますね」
「え、顔にでてた?」
「先輩、分かりやすいっすわ」
財前くんは教室に入ってくると、白石くんの机をごそごそと漁り出した。
「あった。」そう小さく呟いて、1枚紙をひっつかむ。
「頼まれたの?」
「あー…ジャンケンで…」
「…負けたんだね」
「……」
沈黙は肯定とみなす。
相変わらず気怠げな彼だけど、素直に言うことを聞いて紙を取りにくるのはちょっとおもしろい。
「……何か、あったんすか」
「え?」
「いや…」
すぐに部活に戻るだろうと思っていたら、何故かじっと顔を見つめられた。
「元気ないように見えたんで」
「…そう?」
「はい」
「……」
「…そういえば」
どう返せばいいかわからないでいると、財前くんが少し考えるような仕草をする。
「…もう1人アンタと似たような顔してはる人さっき見ましたわ。いつもえらいやかましいのに今日はごっつ静かで…」
気持ち悪くてしゃあないっすわ、そう言って財前くんは教室を出て行った。
それって……
いや、そんなはずないか。
ーーーあの子と話してるとほんっとイライラすんのよね!
小さな期待も、浮かんではすぐに消えていく。
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