自習になった数学の時間。
プリントを解き終わってぼーっとしていたら、前の席の白石くんが声をかけてきた。
とっくにプリントを終わらせているあたり、流石だと思う。
まわりもみんな雑談モードになっていて、たまにどっと笑いが起きていた。
「最近、つばさと仲ええよね」
「うーん、まぁわたしが一方的にって感じだけどね」
「いや、ああ見えて内心めっちゃ嬉しいんちゃうかな。…あのキャラでもあの見た目やろ?女子に"友達"って目で見られへんのや」
「…え、それは恋愛対象になっちゃうってこと?」
「おん。意外かも知らんけど、あいつ仲ええ女友達ってあんまりおらんねん」
やから、これからも仲良うしたってな?
白石くんが自分のことみたく嬉しそうに微笑むから、なんだかこっちまで嬉しくなる。
…どっちかっていうと、今は仲良くしてもらってる立場だけどね。
「…けど、妬けるなぁ」
「ん?」
「俺が最初にみょうじさんと仲良くなろう思っててんけどなーって」
な、
なんという殺し文句を言うのか…!
どっかの幼馴染にも負けるとも劣らないどや顔。
からかわれてると分かっていても、首から上がじわじわと熱くなる。
「白石くんは、ずるいよね」
「ん?なんで?」
「もうなんか、無条件で格好いいっていうか…鼻から牛乳出しても爽やかにキメちゃいそうっていうか」
「いやー…鼻から牛乳はキツイんちゃう?」
またおもろい事言いよる。
そう、頬杖をついて楽しそうに流し目でこっちを見る白石くんは今日イチで格好よかった。
うわ、もうこれ自分の見せ方知ってるな。
よくわからない邪念が頭を過ぎって、なんとなく白石くんから視線を外す。
「…そう、いえば。ずっと言おう言おう思っててんけどさ…」
「うん?」
なんとなく歯切れの悪くなった白石くんを不思議に思いながら返事をする。
なんだろ、言い難いことなのかな。
「…なんか、そんな改まって言う話でもないねんけど」
「どしたの?」
「………あ〜、名前で、…呼んでもええかな、て」
「…名前」
え、そんなこと?
「……うわ〜あかん…なんやこれ、俺…かっこ悪」
さっきまでの余裕のある白石くんから一転、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
この人はさっきの人と同一人物なのか。
やばい、なんかキュンとしてしまった。
「…ほんとは、もっとさり気なく聞くはずやってん」
けど、なんかタイミング逃してしもて。
手で顔を覆いながらぽつりと呟く白石くんの隠しきれなかった真っ赤な耳。
それが可愛くて、こっそり笑ったのは彼には言わないでおこうと思う。
白石は余裕ありそうにみえて、よく分からないところで余裕なかったり、天然で女子をときめかせたりしてると思う。
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