「おはよー!蔵!けん……あれ?」
「おはよーさん」
「蔵、けんやは?」
いつも真っ先に目に入る明るい金髪が見当たらない。キョロキョロと辺りを見渡しながら、なまえは白石の隣の自分の席に腰をおろした。
「謙也なら今日は休みやで」
「えっ休み?!」
言った途端にしゅんとなってしまったなまえに苦笑する。
もし犬のような耳がついていたら、きっとぺたっと垂れているだろう。
「おん、謙也のオカンのお父さんのお兄さんに不幸があったんやって」
「……そうなんだ。謙也大丈夫かな。さみしいなぁ」
「ハハ、素直やなぁ」
机にべたーっと倒れこむようにしてなまえは誰も座っていない謙也の席を見つめた。
……今日は謙也に会えないのか。
そっかぁ。
「明日はくる?」
「どうやろ?明日も休みちゃうかな」
「えぇっ!じゃああさっては?」
「どうやろなぁ。わからんなぁ」
白石のその返事にやっぱりなまえは今にも泣きそうな顔になる。似たもん同士、重症やなぁ。
声には出さなかったが、白石は以前なまえが風邪を引いて休んだ時のことを思い出していた。
「え、今日なまえ休みなん?!」
「風邪やって。あいつ昨日ユウジ達とプール行っとったからなぁ。髪よう乾かさんで帰ったんちゃう?」
「うわ〜、ホンマそれ!あいつちゃんと寝てんのやろか?あいつん家共働きやし、昼間誰もおらんから飯食ってへんかも。いや、そもそも病院いったんか?薬は……」
「……謙也、ちょっと落ち着きや」
おろおろと心配で仕方ないといった様子の謙也を落ち着かせながら、結局あの時はその場で電話をかけ始めた謙也に苦笑したのだった。
「謙也、なにしてるかな?休んでる間、謙也の育ててるねりけし変わりに練ってあげよっと!」
「……なまえはほんま謙也大好きやな」
「うん!謙也優しいからすきー!」
満面の笑みで返事をするなまえになんかデジャヴ……と、白石は某アニメ映画の崖の上の女の子を思い出すのだった。
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