賑かなり、わが日常。



ざわざわと賑やかな声がもれる教室から少し離れた中庭で、凛太は青すぎる空を仰いでいた。
中庭に設置された机と椅子は陽射しによって少し暖かい。
ふと横に座っている疼吾を見ると目の前に座っているいとことその友人たちを眺めていた。(まぁその中に凛太のいとこもいるのだが)
凛太と疼吾に見られていることなど露知らず、鈴音、林檎、千仍は会話を続ける。

「あんねあんね!この前の体育でみやのがやばかったんだよ!!」
「ちよちゃん、それ言ったらいのだって!」
「こっちはむらさこがかわいかったよ〜」
「むらさこぷりーずっ」
「ちよちゃんほんとなっちゃん好きだね」

クスクスと笑う鈴音を見て林檎や千仍も笑いだす。
彼女たちは、さしずめ…腐女子と呼ばれる方々だ。

「楽しそうだね、りんねたち」
「そーだな…」

そんな話を男子ふたりがし始めたとき

「みんなー!たっだいまー!」
「あっ“あいか”!」

“あいか”と千仍に呼ばれた少年は一気に顔をしかめる。

「だーかーらーっ!!あいかじゃないって言ってるじゃん!たしかに愛夏って書くけどさぁ」

そう、千仍のいとこである愛夏は愛に夏で“ちかげ”と読むのだ

「ならあいかでよくない?」
「よくないって!!ちぃ、俺男なんだよっあいかって屈辱なわけ!だっ」
「はい、そこまでね。まったく、ちぃちゃんも毎回毎回ちかげをいじらないの。」
「むっ、りんたくんが仲裁するとは…はぁい」
「りんりんありがとー!!」

とう、と凛太にハグをしかけた愛夏は勢いあまって疼吾にも激突した。

「っ〜…いってぇし!!この石頭っ」
「俺だって痛かったもん!つーか石頭なのはとうやんじゃん!」
「んなわけあるかぁ!!だいたいちかげは…」
「ちーかーげー?」
「ひゃい!?ああああのりんたさんどうなさいましたかぁぁぁあ!?」
「いい加減降りろ!このチャラ男が!」

ていってと凛太が愛夏を芝生に投げる

「ぎゃっ!?う゛ー頭打った…」

ごろん、と芝生に横たわり愛夏は空を見つめる。

「りんりんの鬼畜…(あ、空、すげー青だ。ペンキぶちまけたみてー)」
「鬼畜じゃ意味が違うと思うんだけど?」
「あーりんたひどいんだ〜琥陽くんが怪我したらどうすんの?」
「とうごも大丈夫?こぶできた?できたっ?」
「んでそんなうれしそーなんだよりんごは…」
「あははっちかのばーか」

それぞれのいとこに近付く鈴音と林檎。
千仍は愛夏をちゃかしてのんびりといちごミルクに口をつける。

「騒がしいなぁ…ほんと」

目の前の光景と教室で交錯する想いとある人を愛し続けている“彼ら”と愛されていることに鈍感な“彼”を頭のすみで考えて、千仍はふ、と小さく笑みをこぼした。


(いつもきらきらで収拾つかない、そんな毎日!)






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