林間合宿と轟焦凍@



夏休みに入り待ちに待っていた林間合宿当日。皆の高いテンションに影響されるように、私も行きのバスで皆と一緒に盛り上がっていた。
きっと楽しい林間合宿になるんだろうな、との思いは一時間後のバスの行き先によってすぐに打ち砕かれることになる。

バスが停車したところはPAでもなくなにか建物があるわけでもなく、ただただ山に面したところだった。
そこにプッシーキャッツのお二人が現れ、これから魔獣の森を抜け合宿先に来いという。え、きつい。

緑谷くん、爆豪くん、轟くん、飯田くんを先頭に森をやっと抜けることが出来たと思ったら、美味しそうなご飯が待っていた。

「あー、お腹一杯で幸せ」
「名前ちゃんがっついてたもんね」
「恥ずかしい......」
「このあとはお風呂だね!」
「お風呂楽しみ〜!温泉だといいなぁ」

疲れたあとには美味しいご飯で補給が一番。がっついていたのがお茶子ちゃんにバレていたのが恥ずかしい。お茶子ちゃんが知っていたということは近くの皆見てたのかな......?恥ずかしい......

そしてこのあとは待ちに待っていたお風呂だ!温泉だといいなぁ〜、呑気にそんなことを考えていた私はこのあととんだ波乱が起きることなんて知らなかった。

「わぁ〜!温泉気持ちいいねぇ」
「温泉あるなんてサイコーだわ」
「名前ちゃんの肌すべすべしてるねっ」
「きゃっ、やめてよ三奈ちゃん!」

疲れた身体に温泉が染み渡る。気持ちいぃと温泉に浸かっていたら、「名前ちゃんの肌すべすべ」と三奈ちゃんが私の肌を触ってきた。やめてよ〜なんてふざけあっていたら梅雨ちゃんが「しっ!向こう側からなんか聞こえるわ」と壁の向こうを指差す。確か向こう側は男子が入ってるんだっけ?え?話聞こえてるの?

「峰田くんやめたまえ!君のしている事は己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」
「やかましいんスよ......」

どうやら峰田くんが私たち女子側の覗き見をしようとしているらしい。なんて卑劣な行為だ!女子たちのなかでも臨戦態勢に入る子もいれば不安な表情を浮かべてる子もいる。
もちろん私は戦う!あ、でも私が戦ったら風で女子側と男子側を隔てている壁が壊れてしまいそう。それはそれで結果が悪くなってしまう。なんとか上手い手があればいいんだけど。

「待て峰田、名字はダメだ」
「イケメンがなに言ってるんスか。名字だけ特別扱いっスか?」
「俺も名字の裸は見たことねぇ」
((は??))

いやいやいや、なんか轟くんの声で私の名が聞こえたけどなに???
というか、私の裸見たことないってなんなの??いや、それ当たり前だから!轟くんなに言っちゃってんの?!
みんなの頭の中、今疑問符だらけだから!!

「おい!舐めプ野郎!テメェなに言っても許されるとか思ってんじゃねぇよな?!」
「?、名字のことで俺が知らないことがあったらダメなんだ。だから名字はダメだ」
「知ってるっスか?名字の肌は透明感抜群なんスよ。それを見ちゃダメとか轟拷問」
「そうなのか。名字の肌今度見てみる」
「轟くんストーーップ!!話の内容筒抜けだから!!私のこと勝手に話さないで!!」

い、意味分かんない轟くん!!本当にどうしちゃったの?!
おもわずお風呂から立ち上がり心のままに大声で叫んだら「お。悪りぃ」と気の抜けた轟くんの声が聞こえた。
いやいやそこで正気に戻るんだったら最初から変な発言しないでよ!

結局は壁を上ってきた峰田くんを洸汰くんが撃退してくれて私たち女子は守られたけど、一体このお風呂の騒動はなんだったんだ。

「おぉー!お風呂上がりの女子!!」
「テンション上がるねー!!」

お風呂上がり、寝る前にA組で集まろうということになり、ロビーに皆で集合した。
お風呂上がりということもあり、皆パジャマだし切島くんはいつも立ってる髪が下りてて、女子側も髪を結んでなかったりと普段と少し違った様子にそわそわする。
なかでも峰田くんと上鳴くんはテンションが上がってて、二人の発言に女子側が注目を浴びて少し恥ずかしかった。

「こら!君たち!夜だということを忘れずに!静かに話すんだ!」
「飯田が一番うるせぇだろ」

皆を注意する飯田くんとそんな飯田くんに突っ込みを入れる瀬呂くんのやりとりに笑っていたら、「名字」と後ろから轟くんに呼ばれた。
パジャマ姿の轟くん新鮮......!

「髪少し濡れてるぞ」
「あ、ほんとだ。ここ乾かしきれてなかったんだね」
「この前も思ったが髪、艶があるな。特別なことしてるんだろうな」
「あ、ありがとう。大したことはしてないけど、この前轟くんの家族に会ったときは気合いいれたかな......少しでも良く見られたくて」
「そうか。綺麗だ」

「少し濡れてるぞ」と言いながら私の髪の束を指ですくう轟くん。突然の轟くんの行動に「おわっ、イケメン」と思ってしまうのはきっと私だけでないだろう。
そうだ、轟くんがイケメンなのがいけないんだ。そう思いながら、ドクドク脈打ってる心臓の音を聞こえないふりをしていた。それだけで精一杯だったのに、「綺麗だ」と言いながら指ですくっている私の髪を轟くんが指で撫でたから私はおもわず心臓が口から飛び出るんだと思った。

もちろん私は目の前にいる轟くんの対処でいっぱいいっぱいだったから、峰田くんが「いちゃいちゃするんじゃねぇ」と歯軋りを立てながら血走った目で私と轟くんを見ているなんて知らなかった。

「二人だけの世界になってるところ悪いけど、このあと女子会やろーよ!」

目の前の轟くんをどうしようかと必死に考えていたら、急に肩をぽんっと叩かれ私はおもわず「うわっ、」と可愛げのない声をあげてしまった。
犯人は三奈ちゃんだったようで、女子会やろうよ!と女子の皆に声をかけているようだった。急にびっくりしたけど、轟くんから解放してくれてありがとう。

「それは俺も参加できるのか?」
「いやいや、女子会だから女子だけだよ」
「そうか。残念だな」

女子会やろうって話のなか、隣で轟くんが「俺も参加できるのか?」なんて聞いてきたけど女子会だよ?轟くん。もしかして女子会知らないのかな?轟くんだからありえる......!
そもそも何で参加したいなんて聞いてきたの??

「轟参加したいのー?」
「名字と話せると思ったんだが」
「名前ちゃんのあんなこともこんなことも聞いちゃうよ!」
「ちょっと三奈ちゃん、透ちゃん!」
「それは興味深けぇな。あとで会話の内容教えてくれるか?」
「ダメ!女子会の内容は男子には話しちゃいけないの!」

なにが「あとで会話の内容教えてくれるのか?」だ!!女子会って言うんだから女子だけのお話をする場なんだよ!それをそう簡単に部外者に教えては信用問題になるじゃないか!

「まぁまぁ名前ちゃん落ち着いて。轟ちゃんだって髪結べばぎりぎり女の子でいけるんじゃないかしら?」
「はい?!」
「轟くん髪さらさらやなぁ〜!」

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが轟くんの髪を結ぼうとしていて、子供みたいにツインテールにされそうな轟くんを見て少し笑ってしまった。
体育祭のときの雰囲気じゃ絶対こんなことあり得なかったのに、今じゃ女子にされるがままになっている轟くんが微笑ましかった。

「男子は男子で夜お話するんじゃない?」
「そうなのか」
「うん。楽しんできてね」
「名字もな」

このままじゃ轟くんが女子参加にされそうだったから、轟くんには悪いけど話を区切らせてもらった。それに男子は男子できっと女子には言えない話題を話すんだろう。
さっきのお風呂のこともあり、轟くんの発言には驚かされることばっかりだからきっと男子会でもとんでもないことを話すんだろう......もう私知らない。不用心に私の話題が出ないことを祈ろう。

「さて、女子会始めよう!!女子会の話題って言えば恋バナだよね?!気になる男子いる人ー??」

女子部屋に戻り三奈ちゃんの一言で始まった女子会。女子会の話題と言えば恋バナだけど、とっても張り切ってる三奈ちゃんに比べて、その他参加者は「自分には関係ありません」風に無言を貫いていてそれはそれでおもしろかった。

「なになにー?花の高校生が恋バナ一つないって??」
「一人いるじゃん。名前が」
「響香ちゃんなんで私に振るの?!」
「実際名前ちゃんと轟くんってどこまで進んでるの?」
「透ちゃん、どういうこと?!私と轟くんはただの友人だよ」

なんで恋バナの流れから私に話が振られるんだ?!確かに轟くんとはいろいろあったけど、これが恋バナになるかというと別の意味なような気もするけど......

「名前ちゃんと轟ちゃんが仲良いのはクラス中が知っているわ」
「仲は良いと思うよ。轟くんの家族に挨拶とかしてるし」
「エンデヴァーにもしたの?」
「......うん。家に呼ばれた」
「では轟さんの親公認の仲なんですわね!」

親公認の仲というかなんというか、勝手に呼ばれただけなんだけどね。しかもいろいろと勘違いとか問題があったし......あれを親公認と言っていいのか?
仲がいいとは思う。けど、轟くんの言動は謎なのだ。

「そういえば皆の言ってた通り轟くんって人気なんだね。この間一緒にカフェにいたら大学生くらいのお姉さまに声かけられてたよ」
「まず轟と一緒にカフェ行ってる時点で仲良しじゃん」
「響香ちゃん、轟くんとカフェ行ったりするのはよくあるんだよ。轟くんにフラペチーノや甘いものを教えたのは私なんだ!」
「轟くんさすがだね......」
「で、轟くん大学生に声かけられてどうしてたの?」
「今はプライベートだからって断ってた。綺麗な方たちだったのに轟くんももったいないよねー!轟くんが断るから私お姉さん方に睨まれちゃったよ。そしたら轟くんが『この子は特別なんで』って私のこと言っててびっくりした」
((轟くんの想いは全く通じてなさそうだけど、惚気ありがとう))

轟くんに甘いものやカフェを教えたのは私なんだと自信を持って言ったら「うわぁ」と返されたんだけどなに??
思い返せば轟くんが冷たくお姉さん方をあしらうから、私が睨まれちゃって怖い思いをしたんだよ。でもそのあと轟くんに「怖い思いさせて悪ぃ」と何度も謝られたから逆に私も恐縮しちゃったけれど。

「名前ちゃんと轟くんってどんなやり取りしとるん?」
「普通の内容だよ。今日何食べたとか、何したとか。日常のことが多いかな?」
「なに、この彼氏彼女感」
「私がカフェとかにいると轟くんも来て一緒にケーキ食べることとか多いんだけど、轟くんもすっかり甘いもの好きになったんだね!」
((それは名前ちゃんに合わせてるだけじゃ......))

「やり取り見せてー!」なんて皆に言われて、別に隠すものでもないしと思ってスマホを見てみると轟くんからメッセージの通知が来ていた。

「あ、轟くんからメッセージ来た」
「「なんだって?」」
「......名字はどんな下着を着ているんだ......だって」
「「......」」

......男子で何話してるのかは分からないけど、これは轟くんに悪知恵を与えたやつがいるね。まとめてあいつ等殺っていいかしら?
とりあえずこのメッセージは無視します......!!
ほら、男子が集まるとろくな会話しないんだって!
これなら女子会に轟くん呼んでた方が良かった!


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