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可愛げのないこだなあ




私、名前は現在絶体絶命のピンチに陥っている。学長から任務を言い渡されたのが、三日前。任務場所であるここ、とある廃墟のビルに着いたのが二日前で、昨日には任務が完了しているはずだった。
しかし事態は変わり、一級を祓うはずの任務に何故か特級が現れて、私は現在特級たちに捕まったところである。

「なんで特級が二体もいるのよ」

よりにもよって特級たちは協力し合って動いている。特級が二体、バラバラで来るのなら祓えたけれど、知恵を付けて一斉に来られまんまと奴らの罠に嵌まったのだ。
捕まった私は足首を掴まれ宙ぶらりんにされ、すぐに殺されるわけでもなく呪いに遊ばれていた。

「殺すならさっさと殺しなさいよ!こんな扱いされて許さないからね!」

私を殺すわけでもなくただニタニタと笑う呪いが憎らしい。呪いのくせに人間で遊びやがって。先程から頭には呪いへの悪態ばかりが浮かぶ。
あぁ、本当についていない。

「大体ね、今私が死んだら借りてるDVDはどうなるのよ!死んでも延滞料取られるなんて嫌だからね!貸し借りっていえば五条さんに呪具貸したまま返ってこないの!大事なものなのに!」

今死んだら色々とやばい。借りてるものもたくさんあるし、日記とか人に見られたらやばいものそのまま部屋に置きっぱなしだし。
そんなこといったら、人に貸して返ってこないものもある。なかでも五条さんに貸した呪具は高価なものなのに。

「嫌!今死ぬのは嫌!五条さんだけには私の日記読まれたくない!死んでも脅してきそう!あの人なら!」
「僕のこと呼んだ?」

ひゅっと風を切るような音が聞こえたと思ったら、次の瞬間には私の身体は宙を舞っていて、浮遊感が怖くて思わず目を閉じる。
地面に叩き落とされると思ったら、どうやら何かに支えられているらしい。目を開けた先、真っ先に視界に入ってきたのは先程頭に割り込んできたあの人だった。

「......五条さん」
「死ぬ間際になって、僕が恋しくなった?」
「その逆です。悪い意味で五条さんを思い出しました」
「照れなくていいのに」
「照れてません。それより離してください」
「酷いなぁ。僕は名前を助けに来たのに」

どうやら私は五条さんに助けられたらしい。顔が近いと思ったら、お姫様抱っこをされている状態だった。
死なないで済んだのは良かったけれど、助けられたのが五条さんっていうのが自分の中で許せなくて、足をバタバタして抵抗する。

「ちょっと、何してるの?」
「五条さんと顔が近いのがやだ!」
「このイケメンな顔を拝むのが恥ずかしいのかな?」
「頭おかしいんじゃないの?!」
「本当、可愛げのないこだなぁ」

自分でイケメンって言うなんてどうなの?!確かに顔は良いけどさ。五条さんに助けられて借りを作ったらあとで何されるか分からないじゃない。
五条さんから離れた私は帰路につこうと歩き始めるが、少し歩みを進めたところで五条さんが一緒に横を歩いているのに気付いた。

「ちょっと五条さん!なんで一緒に歩いてるの?!」
「帰るからに決まってるでしょ」
「術式使えば一瞬で帰れるでしょ?!わざわざ一緒に歩かなくても良いじゃん」
「せっかく名前と一緒にいられるチャンス逃すはずがないよ」

結局、助けてあげたお礼でってことで半強制的に一緒に帰ることになった私と五条さん。五条さんの術式使えば一瞬なのに、わざわざ半日かけて高専まで帰った私と五条さんは、もれなく夜蛾学長に怒られるのであった。



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