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かわいいあのこがおきにいり




五条悟には大事な後輩がいる。五条に近しい人なら誰もが知っている事実。
五条には高専時代から特別可愛がっている後輩がいて、今でもその後輩と交流がある。名前。五条の一つ下の後輩で、呪術師として各地を飛び回っている人物。
今日は五条に呼ばれ、一緒に食事をしていたところである。

「久しぶりですね、五条さん」
「元気そうで安心したよ。名前」
「はい。おかげさまで順調に呪術師として活動できています。五条さんこそお忙しいのに食事に誘ってくださりありがとうございます」
「いやいや、僕結構名前のこと誘ってたよ?いつも断ってたのは名前の方じゃない?」
「そうでしたっけ?細かいことは気にしないでください」

にこりと笑って誤魔化す名前の様子に、五条もなんだかんだ許してしまう。五条があまりに食事に誘うから、何か仕事の取引など裏があるのではないかと思った名前が警戒して毎回断っていたことは名前だけの秘密である。

「五条さん、今日はどうしたんですか?何か仕事の話しでも?」
「可愛い後輩と食事がしたいと思っただけだよ。まぁ、仕事の話しもあるけど」
「......やっぱりあるんじゃん」
「なに?何か言った?」
「いえ。何も。」

やっぱり仕事の話をするんじゃんと思った名前。基本的に五条と名前は仲が良い先輩後輩同士であり、名前は五条のことを尊敬している。
しかし、仕事の話となれば別だ。五条と名前は仕事に関する考え方が違う。

「今度はなんだって言うんですか?私は今みたいに日本各地で仕事をするのが好きなんです」
「それは十分分かってるよ。その上でお願いがあるんだ。高専で一緒に教師として働いてほしい」
「......それは何度も断ってるじゃないですか。私は教師なんてできる器じゃありません」
「名前は絶対立派な教師になれる。それは僕が約束するよ。一緒に呪術師の未来を作ってほしい」

名前は五条とは違って、呪術師として日本各地をまわるのが好きだった。いわば何にも縛られることなく、自由に仕事をしたいのだ。
そんな彼女を五条は何度も高専の教師として誘っている。そして毎回断られているのだ。

「私は呪術師内のしがらみが嫌いです。故に自由に生きたい」
「それは分かってるよ。でもその嫌いな呪術師の世界を壊したいとは思わないかい?」
「......んー、」
「教師となって次の世代の子たちを育てるということは、未来の呪術師の世界を変えるということだよ。ここ最近、呪いの不穏な動きには名前も気付いているでしょ?近いうちに大きな動きがある。未来を一緒に変えよう」

名前は五条の話を聞いて、思考を張り巡らせる。確かに最近の呪いの不穏な動きには、おかしいと感じていた。近いうちに呪術師の世界を変えるような、何か大きなことが起こるとも思う。
そのときに自分がいる場所は......このままでいいのだろうか。

「僕の頼みだと思ってさ。お願いだよ」
「その五条さんの頼みだからこそ悩んでるんですよ」
「本当に可愛い後輩だね。名前は」

「......」

五条さんのことは尊敬している。でも、それはいい意味で呪術師として。性格の悪い五条さんのことだから、きっとこの話にも裏があるのではないか。
悩んだ結果、名前は答えを決め五条に口を開く。

「分かりました。その話、引き受けます」
「ありがとう。名前なら引き受けてくれると思ったよ」
「......本当に呪術師の未来のためだけに私を呼んだんですよね?」
「半分はね。もう半分は名前を近くに置きたかったから。一人で任務なんて危なくてしょうがないでしょ。近くにいたら僕が助けられるし」
「......私もう子供じゃないんですけど」

心配性なのは五条さんの悪い癖だ、と名前は眉をハの字に下げる。もう五条さんの助けを借りなくても任務に行けるのに。むしろ五条さんの助けを借りないように訓練してきたのにな。
困った人だ、と名前は五条を見て微笑むのであった。

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