融解 | ナノ


※微カニバ表現





(あったかい、)
ゆるりと目蓋を上げれば靄靄とした視界の一杯に親友の姿が見えたものだから何だか嬉しくなってえどわーど、と寝起きの舌っ足らずな声で呼べばぶっきらぼうに短い返事が降ってきた。左手はさっきからずっと僕の頭を撫でていたみたいでその度に揺れる自分の髪がくすぐったい、(嗚呼、エドワードの心臓の音がする、)彼の投げ出した脚の上に頭を乗せていたから重くない?と聞けばお前は細いからちっとも重くねェよと笑いながら返されて思わず腕を伸ばして彼の頬をつねる。
陽射しも、風も、すべてが優しい。

(どくりどくり、薄い布と皮膚の下で脈打つ彼の血潮の音と温度とがない交ぜになって脳味噌を揺らす。)

「ねぇ、噛んでいい?」
伸ばした腕をそのままするりと滑り下ろして頭を撫でていた左手を掴んで返答も待たずに口元に運ぶ、指先に小さく舌を這わせた時に見せるエドワードの一瞬だけ息を呑む表情が好きだった。(嗚呼、エドワードの汗の味がする、)なんだか頭がくらくらして勢いそのままに皮膚に歯を立てる、ぶつりと鈍い音が弾ければエドワードが小さく呻いて身動いだ。
「痛ぇよ、バカ」
「だって聞いたじゃないか」
「まだ答えてないだろ」
どうせ良いクセに、と小さなエドワードの身体の欠片をゆっくり咀嚼する、ぼたぼたと頬に垂れてくる赤い液体も勿体無くて指ごと口に入れると傷に染みるのか顔をしかめられたけどお構いなしに鉄臭い血を味わった。

(僕は、エドワードのいのちを食べている、)

じわじわと身体に広がる味にうっとりと夢心地にいれば仕返しと言わんばかりに覆い被さってきたエドワードが肩口に噛み付いてきた、(結んだ髪がひやりと首筋を撫でる。)彼は優しいから僕みたいに肉ごと抉り取るだなんて真似はしないけれど、(もっと酷くしてくれて良いのに)それでもぷつりと小さな音を立てて犬歯が皮膚を食い破り、そうして流れ出す僕のいのちを飲み下している。
傷口からじくじくと脳髄の奥にまで滲んでいく熱は幸せそのものだ、僕が、彼が、互いに互いの『いのち』を無言で啜り合うそれは性的行為なんかよりもずっと素敵で神聖なものに違いない、この瞬間が堪らなく好きだった。

「僕がエドワードになって、エドワードが僕になって、そうしていつか二人がおんなじになっちゃえば良いのにね」

どろどろと心までもが融け合ってこの浮かれた熱を彼と共有できる様を想像すればそれだけで嬉しさに鳥肌が立った、顔を上げたエドワードの口の端に僕の血がこびりついているのを見ると異様なまでの優越感に包まれて思わず頬が弛む、(ああ大好きな僕の、ぼくだけのえどわーど!)
今すごく幸せだよ、返事代わりのキスはエドワードの血になった僕の血の味がして、もうすぐ始まってしまう午後の授業だなんてどこかに行ってしまえば良いのにともう一度目を閉じた。


(どくりどくり、混じり合った二人分のいつもより性急な鼓動がシアワセに世界を揺らす。)





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