恋愛論 | ナノ




動物に、
なりたいと思った事はあるかい。(視界の多少は白む程には太陽は高く、風は緩く温く流れている。)同じセイブツの名を冠しながらにしてニンゲンとは区別された存在に憧れるのは何故だろうか。カメレオンに、少し。それは体の色を変えられるから? そう、です。今の君の能力の方が素晴らしいのにの問いには直に人を救えぬのならいっそ動物の方がという答。嗚呼そんなに僻むことは無いだろうに、可哀想な針鼠と違ってヒトは寄り添い体温を分け与えることは出来るのだ。(コトバを交わさずして愛を確認できるのは同じか、それともこちら側の自惚れなのか)

私は魚になりたいよ、鳥ではないんですね、鳥もきっと素晴らしいのだろうけれど、けれど?、空は。あの場所はあまりにも広くそして孤独な存在だ、幸せも不幸せも喜びも悲しみも正義も悪も生けるも死せるもおぞましいまでの全てが見えてしまうのが怖かった、実際にそれ等を抱えて青に溶ける事が出来る程に私は強くない。(それがきっと己が空に住まう紛い物であるという罰なのだ)

魚になって、君を飲み込んだら誰もいない海の底へと潜ってしまいたいんだ。君はどうか分からないけれど私はもう人であることに些か疲れてしまった、全ては海から生まれたというのなら還るべき場所もまたそこに他ならない、(空に還るのはヒトだけだ)言葉も雰囲気も表情も伴わない世界だけれどあの深い青に抱かれて君と呼吸を共に出来るのであれば構わないよ。(少なくともゆらゆらと空気のカタマリを吐き出して泳ぐ君を想像できるくらいには愛している。)
どうだろうかと問えば暗い所は少し怖いですという答え、でも貴方と一緒なら大丈夫だから何処へでもと付け加え俯いてはにかむ愛しい存在はしかしながらヒトであって私も彼もケモノには成りきれない。(蟷螂の雌が雄を喰らうのを残酷とするならば、人が人の命を喰らうだけの殺し合いは如何に呼べというのか)

本能だけを剥き出しに愛を貪る存在をヒトは嘲笑うけれど理性を以てして初めて他人を愛する我々もまた彼等に嘲笑されている、魚になりたい願いもただの言葉でしかなくて結局はニンゲン同士の愛として蓄積されるだけだった。



(明日も囁くはヒトの恋愛論)



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