(ですよね・・・)
追いかけていたはずの少女を見失い、自分の居場所もどこか分からずに。
とうとう手詰まりになったことに気付いても、もう遅かった。
再度煙草に火をつけ、空腹にしみるその煙に項垂れる。
露店が良い匂いで誘ってくるが、もう騙されない。
女の子に着いて行った時点で、自分の決断力が当てにならないことを知った。これ以上英断という名の間違いを繰り返していたら本当に寿命が縮む。
(どこからが間違いだったかな。可愛い子についていったところかな。それともあの時間あの電車に乗ってしまったところ・・・いや、ていうかそれなら明け方まで飲んで爆睡したのも・・・え、専門学校選んだのがそもそもの間違い?)
考えれば考えるほど、憂鬱になる。
気分を変えようと、先ほどまで追いかけていた少女に思考をめぐらせた。
(あー・・・サイコパスだ)
そうしてひとつだけ、胸のつかえが取れた。
女の子が来ていた制服。コートに隠れてスカート部分しか見えなかったもののどこか見覚えがあった気がしていたが。アニメに出てくる制服に瓜二つだった。
(コスプレ?いや、あの色なら良くあるしなぁ。でも学生がこんな時間にこんな所に居るってよりはレイヤーさんが居るほうが、あり得る・・・?もうわかんない)
しかし。
再度露店の方に目を向ければがやがやとうるさい喧騒。
ここで騒がしくしている人間よりは、喋りかけるのを躊躇われた泣きボクロの男の方が良かったのだろうか。
(でも見かけだけで判断するのもなんだかなー・・・)
やはり一番いいのは制服の女の子だろう。
もしくは・・・一番最初に見かけた黒服の男でも良かったかもしれない。
ああでも本当に自分が事件に巻き込まれていたのなら、あんな人種は逆効果だろう。
歩きつかれて、眠気で思考も半分うつろだ。
何が最善なんて分からない状態で(もともと今までも最善の選択は出来ていなかったが)、いつもなら絶対に選ばない選択肢を導き出していた時に。
(・・・何アレ、銀髪?白髪?)
目の端をちらつく光。
よく見ればそれはこの場所に似つかわしくない男だった。
一言で言えば、白。
漂う清潔感も、銀髪も、浮かべた笑顔も。
雰囲気で言えば端正さも含めて先ほどの男に似ていないことも無いが・・・。
(なんつーのかな。こっちの方が、もっと・・・白いな。見た目が)
考えて、咥えていた煙草を地面に落として、踏み潰す。
選択肢を全部捨てることも、もう飽きた。
ただ、怖いからバッグに入れた香水からは手を離さない。
痴漢撃退スプレーや、田舎の秘儀ミカン汁には劣るかもしれないけれど、それでも目に入れればそこそこ痛いだろう。
(よく見りゃイケメンだし、それが私がつけてる香水とおんなじ匂いに包まれるってのも悪くないよねぇ)
なんて、地元の友人に聞かれればドン引きされるであろうことを考えて、笑う。
逡巡することもあきらめて、そちらに向かった。




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