室内に入ってきた学園長の困った顔よりも泉宮司の薄ら笑いの方が頭から離れない。
選択肢は間違えていない筈だ。

「ちょっとなまえ」
雄飛の声がして、僅かに苛々として振り向いた。
「何ですか?」
「学園長が、あんたが帝都グループ会長との養子縁組断ったって」
こういう時にどう返せばいいのだろう。
雄飛が心配してくれているのは分かる。
そして面倒だ。
「ごめん」
「・・・どうしたの?」
喋りたくない。雄飛佐々という人間は善良な市民だから。
今でも覚えている。初めて出会った頃のつんとした表情。
犯罪係数の伝染。サイコハザードを気にしていたのだろう。
他の人間に対してよりもかなりきつい態度だった気がする。
それでも自分のサイコパスが徐々に好転するにつれて軟化していった態度。
今では学園内の誰よりも彼女の表情を引き出せると自負している。
だけど、それがどうした。
「別にいいじゃん。雄飛さんが養子縁組してくれたら」
「・・・はぁ!?」
ぽつりと呟いた言葉に頓狂な声で反応する雄飛。
鼻で笑ってしまう。
「残してるのは職業適性。それが終わったら就職できる。就職の時に必要な書類に雄飛さんの名前だけ貸して欲しい。お礼は就職してから。必ずするよ?」
「いや、あの・・・話が飛びすぎよ?なまえ?」
珍しく焦ったような、慌てたような雄飛に笑いかけた。
(雄飛さんも、もっと人間らしくなってくれたらいい)
「ねぇ雄飛さん。それよりも明後日の夜ヒマ?」
「え?ええと休日だし・・・ちょっと料理の練習を・・・」
「じゃあ、ちょっと私にお時間下さいな」
ある意味夜のお誘い。
きっと佐々山のように奔放ではない筈の雄飛が、自分の誘いに乗ってくるかは分からない。
さぁ、どうなるんだろう。雄飛はどこまでなんだろう。
「・・・分かった」
渋々と言った感じで了承してくれた雄飛に、にっこりと嗤いかけた。




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