高校3年の最後、自立するための就職という選択肢は、だけどまだ遊びたいと就職までの準備期間と。
親が望んだ専門校への進学のため独り暮らしする権利で消えた。
絶対に、独り暮らしになったら犬か猫を買う、というのが今の夢。
アレルギー持ちの父親も居ない。
自分好みに部屋のインテリアも変えて。
でも同居人、もとい愛玩動物も居るのなら、しばらくのためにバイトを探さないと。
親の仕送りなんて、きっと最小限だろう。ただでさえ独り暮らしに難色を示していた2人だ。
自堕落な生活をしていると知れたときには、考えて、ぞっとする。
自嘲気味な笑いが口元に浮かんで、消えた。

まどろみから覚めたばかりで浮かれたままの思考が、現実を改めて認識する。
つまり。
(23時・・・え、嘘だ)
携帯に表示された時間。
もともと今日は新居の入居日だった。
荷物は既に送っているが、その学生アパートの鍵は・・・21時までに受け取ることになっている。
慌てて電車内を見渡そうとして、明らかに異質な状況に気付いた。
(なんで、真っ暗?)
戸惑いながらも記憶を辿った。
今日の朝までお別れパーティと称して高校の同級生と宴会を上げていた。寝坊の原因。
仮眠を取って昼過ぎに家を出た。しばらく顔を見なくて清々する、けれどホームシックになったらどうしようなんて笑いを堪えながら母親と挨拶。
新幹線に乗って1時間弱、ローカルに乗り換えた後、うつらうつらして、爆睡してしまった。
そして今。
乗っていた筈の電車内は電気が全て消えている。
携帯の明かりのみが光を放っていて、周りの状況は正直、何も分からない。
4月にしては寒い気温と精神的なもので背筋がぞくりと冷えた。
(・・・意味わかんね)
現状に思考は追いつかない。
けれどだからと言ってこのままここに居て何になるのだろう?
(かなり不安だけど、どうしようもない・・・で、合ってる、のかな・・・行くしかないか)
思い立ったら即行動、が自分のいい所だと自他共に認めている。
今朝まで飲み明かしていた友人との会話を思い返し、無理やり笑顔を作った。



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