本日のサイコパスはクリアホワイト。
ふざけた事を言ってきたホロアバターはとっくに電源を切っている。
ごろごろと横になってもすることがない。
煙草を吸っても鬱々とした気分は晴れない。
学園での個別授業は元々早々に打ち切られており、今では自室での学習を主にするように言われていたが勿論やる気は起きない。
ぼーっと自分が吸っている煙草を見つめる。
SPNEL。
佐々山光留が吸っていた煙草。
(最後の最後まで、ね)

あの日。
佐々山光留に最後に会った後。
自宅に向かいながら公安局に通報した。
内容は廃棄区画内の佐々山、藤間が居た位置情報。
一般市民が事件現場を知っていると言う違和感は少しでも拭うために、
『藤間幸三郎と言うロリコン教師が、基本的に僕は廃棄区画のこの辺りに居るんだ会いに来てね僕のお姫様はあと。なんて地図付きメールを送ってきたんです助けて下さいおまわりさん』
なんて・・・だいぶ脚色したが。
藤間幸三郎は要注意人物。
本当だったら公安にもマークされているはず。
きっと一市民の通報にもある程度の信頼はしてくれても良いんじゃないか、なんて。
期待していた。
あの日から数日。
佐々山光留の面会はない。
きっと、駄目だった。
無駄だった。
(あー・・・馬鹿らしい。本当に、らしくない。公安に通報なんてするんじゃなかった)
自嘲気味に笑う。
煙草の煙を肺に吸い込んで、あぁもう残り少ないなぁ・・・なんて、思った次にはすぐに新しい煙草に火をつける。
もう煙草を提供してくれる存在は居ない。
こっそりお願いしていた1カートンも残り2箱。
天井に上る煙を見つめる以外、何もしたくない。
(私、なんのためにここに居るんだろう)
今まで何度も考えた。
答えなんて、分かっていたら。
(あー・・・煙草替えようかな。嘘だけど。
公安局に喧嘩売ろうかな・・・出来ないけど。
今更だけど、藤間幸三郎に鋏刺してやろうかな。うん。無理だけど。
・・・佐々山さんに、会いたいな)
現実逃避は心の安寧のためには良薬だと思う。
それが出来ないのは自分が生きているから。
こんなに自分は人間らしい。
乾いた笑いを浮かべて、膝に瞼を押し付けた。
(佐々山さん。死んだように生きたいなんて思った私は、こんなにものうのうと、生きてるよ)




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