(さっすが藤間先生仕事はやーい)
最近になって施設から携帯を与えられた。
そこに表示される藤間からのメールに、知らず笑みが浮かぶ。
メールに添付された地図には、学園の抜け道、藤間学園から扇島へのルートが表示されていた。
学園内の道は大体把握しているため、あの辺りを抜ければなんて考え事をしていると。
「お。彼氏か?」
「違いますー」
横から覗き込もうとする佐々山を押し返し、ついでにその顔に煙草の煙を吹き付けた。
人のメールを盗み見ようとする彼に対しては、当然の報いだ。
大体若い女一人の部屋にずかずかと入ってきている佐々山はデリカシーに欠けている。
「ぐっ・・・お前、日に日に俺の扱いが雑になってるだろ」
狡噛と大違いじゃねーかとぼやいていたので鼻で笑ってやった。
「顔の造りが違うじゃないですか。狡噛さんぐらいイケメンなら私もときめいて猫被ります」
「女の本音かよ」
ひくひくと顔を引き攣らせる佐々山。
営業スマイルを贈ると大げさに溜息を吐かれた。
「大体お前、いつの間に人の煙草ぱくってんだ」
佐々山の視線の先にはSPNEL。
見知ったパッケージの煙草になにやら思う所があるようだった。
が、知ったこっちゃない。
「え?これはいつもいい子のなまえちゃんに魔法使いの王子様がプレゼントしてくれたんですよ?」
「こないだ来た時に俺の煙草がなくなったんだが」
「うわぁ濡れ衣―。そんな人を疑ってるから色相濁るんです」
「・・・なんでお前の色相がクリアカラーなのか、本当に分かんねぇ」
恨み言のようにぼやいているのを見て、つい苦笑が零れてしまった。
自分だって不思議だ。
煙草、(自分のバッグに対する)放火、ストレス、(佐々山の煙草の)窃盗。
文面だけみれば色相が濁っていてもおかしくない筈なのに。
しいて他の要素を挙げるとするなら自分がイレギュラーな存在だから。
(この世界のシステムでは私の心を計れない・・・ってどこの中二病だ)
廃棄区画で出合った白い男を思い出してげんなりした。
「こんなに純粋な女の子の色相が濁っていたら、それこそシビュラを疑っちゃいますよ?」
「自分で言うな」
ぼふ、と軽く頭をはたいてくる佐々山に「暴力反対。DV。セクハラ」と毒づけば「出会ったころは可愛かったのに」と嘆いていた。
「どうでもいいからマカロン食べたいなー」
「おいこら」
文句を言いつつもリクエスト通りにマカロンの紙袋を差し出してくる佐々山が好きだ。
子どもの自分であっても対等に接してくれる姿には、好感しか抱かない。
先日の準日本人がいつ死のうと知ったこっちゃない。
それでも佐々山が死ぬ時には・・・
(中二病っぽく人の魂の輝きが見たい?んー・・・違うな)
ただ、最後を見届けたい。
それなりに真摯に。
そして観たい。
少しでもこの世界を理解したいから。
この世界で始めての大晦日。
来年の大晦日は、きっと一人だ。




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