小話 | ナノ

妄想をたぎらせてみました




「稲妻さん、僕決めました」


何時になく真剣な煉獄の声に、稲妻は目を通していた書類から彼の方へと何となしに視線をやる。


「……へ、!?…ちょ…!」
「覚悟を決めたんです!だから稲妻さんも覚悟を決めて下さい…!」


赤らんだ顔に八の字に下がった眉でこちらを見る煉獄の出で立ちが、明らかにおかしい。
清潔さを感じる真っ白のベッドシーツらしき布を、色の白い肌を隠す様に纏っているだけで他には何も身につけていないように見受けられるのだ。


「……何つー格好でいるの。人が周りにいないとはいえ」


苦笑と共に流してみせるものの、先程から嫌という程心臓が高鳴っている。
煉獄をスルーして再度仕事に取り掛かろうとするが、あの姿が何度も脳裏に浮かんで集中できたものでは無い。
視線を軽く上げれば、頭に浮かんだままの姿で眼前に彼が立っている。


「……」
「………」


これをどうしろと。
…あれか、僕のハジメテを稲妻さんに…!、とか言う美味しいシチュエーションのやつか。覚悟ってその覚悟の事か。

男として据え膳食わないのは恥だ、と稲妻は心の中で叫ぶ。勢いそのままに席から立ち上がろうとするが、はた、と思い立った。


……確かに、美味しいシチュエーションフラグは立っている。
だが。しかしだ。
ここまできておいて、最後の最後で早とちりだった、なんて事もないとは限らない。

稲妻は目のやり場に困りつつ、立ち上がって、煉獄の肩に手をやった。
微かに煉獄の体を震わせたのが判った。


「……覚悟って、その……ベッドでヤる、アレの事で間違いないか?」
「……は、…ぃ……!」


可哀相になる程顔を赤くした煉獄は何度も縦に首を振って、稲妻の腕の中へと体を埋め、くすぐったいような力で抱き締める。
抱き返す稲妻は、煉獄の黒髪に優しく口付けた。


…夢じゃないよな。
…ッ!……大丈夫、舌噛んだら痛かった!どこぞの神様有難う!
よっしゃ、念願のベッドイーン!!



















「……って言う夢を見ました」


力無く頭を下げる稲妻に、詠良は引き攣った表情のままにコーヒーの入ったカップを渡した。

警務団内公廨の来客用スペース周辺には、肉眼には映らない影に覆われているような、そんなどんよりとした空気が停滞している。


「…すみません、稲妻君が変態だったのは熟知しているつもりでしたが……取り敢えず、煉獄君の反応は」


稲妻の向のソファーに腰かけた詠良は、既に呆れ顔だ。
それを隠そうとはせず寧ろ全面に押し出している。


「鉄拳を数発…あと、火炎放射で死ぬかと思いました……やっぱり煉獄は鉄壁ガードでした」


そりゃそうだよなー、と呟く稲妻は半端なく落ち込んでいる。
暗い空気が鬱陶しい。
遠目から他の団員達が困惑した面持ちでこちらを見ている。


「俺ぁ…初めてです……、あんなにまで虚しい朝を迎えたのは……」
「……」


だからどうしろと言うのだ。
詠良は、これからまだまだ続くであろう話を予期して、本日何度目になるであろう長い溜息を吐いた。


(……)
(煉獄に会ったら色んな意味で大変な事になりそうな気がする!!)
(……手を出す前に稲妻君が大変な事になると思いますけど)



fin.



>キャラ崩壊した稲妻が書きたかった。
実は(?)変態な子なのかもしれません(笑)
煉獄の鉄壁ガードは絶対防御です^p^
稲妻と詠良の関係は何となくでも判って頂けたかなと。
ってか稲妻の頭ん中の5割は基本アハンな事でいっぱいだと思います、こんのやろー。


101020






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