とある円卓決議会 | ナノ
(ファイヤー+フリーザー)





「近くに来たら融けてしまうわよ」


あたしは目の前に悠然と立つ男にそう言った。
あたしは焔。あんたは氷。
雪を融かし、命を芽吹かせる者が氷結の主を融かせない訳ないじゃない。


「貴女に融かされるような真似はしませんから」


御心配なく、なんてたおやかに会釈したあいつを、あたしは一瞥するとそっぽを向いた。


何がご心配なく、よ。


今だってそう。涼しそうな笑みを浮かべている癖に、だったらその汗は何だって言うの。
輪郭をなぞって滴るそれは、あたしの纏う熱を感じている証拠。
本当に融けてしまう。
氷雪が水になるように、消えて無くなってしまうのだと言うのに。


腹の底が僅かに沸き立った。
あたしはいつの間にか、自分ではどうしようもない位に苛付いていた。
きっ、と細めた視線の先にあった草花が燃える。

あたし達は家族、であっても決して相容れる事が出来ないのだ。


「……何処にも行かないで下さい、ファイヤー」


場から立ち去ろうとしたあたしを、兄弟の声が止めた。
僅かに振り向いてみれば、表情を微かに曇らせたあいつが静かにこちらを見ていた。
薄く開いた唇は何かを紡ごうとしたのか小さく開閉したものの、結局押し黙ってしまう。
本当に何なのよ、もう。


「…仕方無いわね、」


しょうがないから、このままここに居るわ。
そう紡いだ自分の言葉が未だにそこらへんを漂っているのではないかと思いたくなる程、おかしな余韻を残していた。
あたしが、誰かを心配するなんて事があるのか。
そんな事で苛立っていたなどとは、自分の事ながら直視できない程恥ずかしい。
恥ずかしさをごまかす為に小さく紡ぎ出したメロディーはそのうち、もう一つの声と重なった。


fin.



>円卓の番外編…?な感じで読んで頂ければなと。
ファイヤーの解説には春を司るとか何とかと書かれていたので、ならフリーザーもかと思ったらそうじゃありませんでした。あれ?
私の中での三鳥は三つ子なので、皆どこかしらそっくりです。
本当は大切に思っているのに、つんつんしてしまう。三つ子は皆ツンデレです。


title:箱庭様



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